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            日常の風景   NO.0265
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天使の架け橋

やっと猛暑が終わって秋が来た。
今年の夏と秋の季節を隔てていたものは、錆ついた大きくて厚味のある古いドアだった。
鉄製の古めかしいドア。

押したり突いたりしてこじ開けようとしても、なかなか開かなかったのに、
やっと開いたかと思うと、勢いがつき過ぎて、季節が一気に回転してしまった。
朝晩など涼しいを通り越して、寒いと感じることさえある。

あれほど毎日、強情な晴天が続きに続いたのに、
今朝の空は厚い雲に覆われている。

ただ、東の空だけ雲が割れ、その隙間から、
あたらしい朝のひかりがよわよわしいながらも、宙に満ちていた。
やさしく、暖かく感じられるような陽のひかりだった。

彦根城の中堀沿いにつくられた遊歩道から、お堀を見下ろすと、
水鳥が仲良くつがいで遊んでいる。
首をまっすぐに持ち上げ、ただ水上を悠然と闊歩している。

空腹で餌を探しているようには見えない。
満ち足りて、ただただ遊んでいるように見えた。

人も人以外の生物も、生きるために必死で何かをしているという風景は、
こころ打たれるが、こころ休まらない。
ただ無心に遊び戯れているという景色を見るのが好きだ。

突然お堀に、小さな波紋がいっぱいに広がった。
一瞬水澄ましかと思ったが、雨だった。
霧のような細かい雨が虹のように降ってくる。

顔に当たると、多少の冷たさは感じるのだが、
よわよわしいながらも、陽は差しているし、
傘を差す気にはならなかった。

同じ気分を共有していたのだろう、
ぬいぐるみのようなふさふさとした毛並みの白い犬を散歩させていた
若い女性も、傘を手にしているのにもかかわらず、それを差さなかった。

空を見上げると、霧雨が陽に反射して虹色に光り、
いわゆる天使の架け橋と呼ばれているひかりが、
厚い雲の隙間から地上にまっすぐに降りてきていた。

この光景どこかで見た記憶がある。ひょっとしてデジャブ(既視感)と思ったりしたが、
すぐに想い出した。エルグレコの敬虔な宗教画にこのシーンが描かれていた。
確かこの架け橋を伝って、グレコの天使は地上に降りてきた。

それにしても「天使の架け橋」誰のネーミングだろういい名前である。



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sceneryの風景

今回の尖閣諸島をめぐる中国との問題。
実際の国際政治というものを知るには勉強になりました。

戦争というのはこのようにして始まるのだなという実感です。
平和運動というのは、その運動があまり必要でない
平和な国でしか成り立たないというのも実感しました。

実際の国際政治の世界は正にパワーゲームです。
話し合いでとか、外交的努力を積み上げてとかいう美麗美句は、
相手にその気がなければどうしようもありません。

普天間からアメリカに出で行けと内心では思っている多くの人も(わたしも含めて)
中国の力に対抗するには、最終的には、それ以上のパワーがある
アメリカに頼るほかはないのだということも、まざまざと見せつけられましたね。

日本の外務大臣は「国内法に乗っ取り、粛々と進める」と言っていましたし、
中国にも、尖閣諸島は中国の領土と明記された国内法があります。
お互いの国が国内法でぶつかれば、本当に落とし所がなくなり、
事態はこじれに、こじれて行ったでしょう。

日本が誇る先端技術のハイブリッド車なども、産業のビタミンといわれている、
中国からその9割を輸入しているレアーアースがなければ、
ハイテク業界は成り立たないのです。
中国がレアーアースの禁輸を続けた場合、日本の産業界を直撃するその影響は身震いするほど大きなものです。

いわば、中国に日本の生命線を握られているといっても過言ではありません。
今の日本と中国の力関係からして、
他の国も最終的には中国の味方をせざるを得ません。

世界の経済をリードしていた今から30年前には考えられもしなかった事態です。

禍根を残したとか、原則論からいろいろと批判はあると思いますが、
今回中国人の船長を、帰国させたのは事態をこれ以上悪化させないために正しい選択でした。

しかも、それの決定を表向き政府とは直接かかわりのない、
那覇地検にさせたことです。
これなら日本の政府もかろうじて名目だけは立ちました。
戦争する気なら別ですが、そうでないのなら、これ以上の解決策があったとは思われません。

帰国させてからも中国がなおも強硬なのは、
今の中国の指導者に対して、日本に甘すぎるのではないかという、
現政権に対する強力な対抗勢力があり、日本以上の権力闘争があるからです。

中国のトップは、本音では日本と協力的互恵関係を続けたいと真剣に考えているはずです。
いま現に中国に住んでいる、ふるまいよしこさんのメールマガジン
大陸の風−現地メディアに見る中国社会を詳細に読んでも、それは間違いないと思います。

「日本を声高に非難する、中国の報道官のアナウンスしていることを額面通りに取っては絶対にいけません」

国内の権力闘争というはの、政治空白を生みますし、危険でやっかいなものです。
どこの国でも領土問題は、ナショナリズムの琴線に触れますしね。
いずれにしろ、強大な経済力と、軍事力を背景に、
力任せに押してくる中国のやり方は、多くの日本人の気持ちを傷つけました。



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