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            日常の風景   NO.0291
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雨の地下街

人混みが気にならない。
もっとはっきり表現すれば、雑踏が大好きである。
今でも時々香港や、バンコックの信じられないような人混みをなつかしく思い出す。
混沌、熱気、人いきれ、猥雑、騒音。毎日がお祭りのようである。

一週間を振り返っても、一番長距離を歩くのが、
毎土曜日に訪れている大阪の地下街である。
わたしにとっては混雑している地下街は絶好の散策コースなのである。
常になにがしかの刺激があって、多分わたしの健康のためにもよい。

散策コースなら彦根にも山ほどある。
早朝の彦根城はもちろん(早朝なら彦根城は無料で開放されている)
お堀の周り、井伊大老も若いころよく散策した芹川の土手堤。琵琶湖岸など、
他の地域の人から見れば、多分うらやましいような環境である。

でもあまり散策はしない。
人は贅沢にできていて、地元にはないものを常に求める傾向がある。
都会に住んでいる人が退職後、第二の人生をひなびた山里で、
畑仕事をして暮らすという人がいるが、わたしには信じられない選択である。

もし、ふるさと彦根を離れなければならない事情になったとして、
お金が充分にあれば、迷うことなく大阪の都心のマンションを選ぶ。
話題になっているホットな小説を一冊手に持って、毎日都心の繁華街や地下街を散策する。
疲れを感じたら適当な喫茶店やホテルなどに入り、そこでゆっくりと本を読む。

これはわたしの夢想であるが、夢想にとどめておいた方がよいのも理解している。
田舎に住んでいて、一週間に一回だからこそ、雑踏が楽しい。
ごくたまの旅行だからこそ、アジアの混沌が楽しめる。

そのようなことはよくわかってはいるのだが、
基本的には田舎よりは都会が好きという事実はどうしようもない。

見なれた地下街ではあるが、雨の日はいつもとちょっと様子が変わる。
その主な原因は男女がそれぞれに手にしている濡れた傘である。
男の傘は何の変哲もない折り畳みの傘が多いが、女性の傘は違う。
カラフルでバラエティに富んでいる。おしゃれを意識した傘が多い。。

傘の持ち方もいろいろである。
自分の体と垂直にきちんと持っている礼儀正しい人もいるが、
先端を斜めに突きだしている人、ぶらぶらとスィングさせながら歩く人。

カップルで歩く人も濡れた傘はやっかいだから、自分達は密着していても、
傘は大きく外に膨らませている。
歩行者にとっても、傘の先端は気になるし、濡れた傘に接触するのも避けたいから、
要するにいつもよりは歩くのに余分なスペースが必要になるのである。

だから、2割から3割ぐらいは混雑するような気がする。
と、ここまで書いて自分で気がついた。

雨の日は、地上を歩いている歩行者が地下街に避難してくるのは当たり前で、
混雑しているような気がする。ではなくて、実際に混雑しているのだと。
あほらし、とは思いましたが、この文章でもう一つ気づいたことがあります。
続きはsceneryの風景で。



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sceneryの風景

雨の日は地下街を歩くのに余分なスペースが必要になるというのは事実です。
その主たる原因が濡れた傘にあるというのも事実です。
だから、混雑するというのも事実です。

書かれたことがすべて事実で、たとえ説得力があったとしても、
ほんとうの原因を隠している。あえて焦点にしない。
このようなことは政治の世界では日常茶飯事だと思う。

今回の大阪市長選挙を見ていて、橋下市長の弁舌がうますぎるのが気になった。
ロジックは正しい。力強い。説得力がある。
聴衆の年齢層や、地域の事情に合わせて当意即妙に演説内容を変える。
ヒットラーにも匹敵するような一種の天才的なアジテータに感じられた。

ただ、ヒットラーと違うのは、当選後は、
現実的な対応をそれなりに取っていることだと思う。
その点で優れた政治家であることには間違いがない。

一方、選挙に負けた平松前市長の演説はお粗末だった。
あれではわたしは何もしません、できませんと言っているようなものだった。

テレビニュースも新聞記事も、さわやかな演説であっても、
それを鵜呑みにするという習慣が、国民にとっては最悪だと思います。
たとえ書かれた、語られたことが事実であっても、
それは事実の一部にすぎないと、常に批判の精神を忘れないようにしたいものです。



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