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            日常の風景   NO.0299
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歴史博物館

審美眼と言えるほどの知識も能力もないのに、
あらゆる種類の美術館や博物館を訪ね歩くのが好きである。

最近では正倉院展を見に行ったり、福井の恐竜博物館の充実ぶりに感心をしたり
興味のおもむくままに脈絡も節制も統一性もなにもない訪問であるが、
とにかく大好きなのである。

久しぶりに相棒と一緒に大阪に行く機会があったので、
大阪城近くにある大阪歴史博物館を訪れた。

「日欧のサムライたち」というタイトルの特別展をやっていた。
日本と西欧の甲冑や刀を比較するというコンセプトである。
展示物はそれほど多くはなかったが洗練されたいい雰囲気を醸していた。

日本の鎧と西欧の甲冑。
並べて比較してみると歴然とした文化の違いがある。

装飾品としての甲冑は特別として、実戦に使用されるような
西洋の甲冑は余分な装飾はほとんどなく、シンプルで重厚で機能的。
甲冑そのものが凶器と呼べそうな銀色の妖しい輝きをみせている。
人の形をしている立体的な日本刀とでも表現すべき美しさである。

それに対して日本の色々威(おどし)二枚胴具足などと呼ばれる
鎧や兜は美術品としての価値が素晴らしい。
もちろん、動きやすさ、軽量化などの工夫もいっぱい見られるのだが、
当時の鎧職人は美術品としての意識も半分以上を占めている。
美しい見事な形状、装飾、色彩である。

戦闘から身を守るという機能から甲冑をみれば、
それは圧倒的に西洋の方がすぐれている。合理的である。
それを最初に感じたのは織田信長かもしれない。

織田信長はすぐに西洋兜を模倣した南蛮兜を日本でも造り、
部下にも与え、実戦でも使用した。

その南蛮兜の展示もあったが、すぐに日本風に改良されている。
西洋兜はこれ以上ないほどにシンプルに実用的に造られているので、
そのまま真似をすればいいと思うのに、
戦闘には全く関係のない余分な装飾がほどこされ、
やはり美術品に仕立て上げてゆくのである。

合理的で機能的だけでは決して満足できない日本人の美意識。
西洋の合理主義に感嘆すると同時に、
日本人としての誇りが取り戻せるような素敵な展示会でした。



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sceneryの風景

鎧でいちばん印象に残ったのが、真田幸村が所蔵したと伝えられる鎧。
手甲(てっこう)にはみごとな6文銭が浮き出ていた。

今回の展示は武具のほかにカラフルな屏風絵が見事だった。
本物もあり、レプリカもあったがわたしには見分けがつかない。
ネームプレートにレプリカと書いてなければわからない。

大阪冬の陣当時の大阪城の地図もあった。
真田幸村が善戦して有名になった真田丸も描かれていたが、
頑強な城壁の外に築かれた小さな砦で、
よくもこんなところで戦う決心をしたものだと感心をした。

ひょっとして、真田幸村は能力はずば抜けていたが、
人間関係がうまく作れないような人ではなかったのだろうか?
石田三成と同じような欠点を持つ、そんな人ではなかったのだろうか?
当時の地図を見ながらなんとなくそんなことを思った。



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