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            日常の風景   NO.0317
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グランフロントにて

旅行が好きである。
自然も大好きである。1日か2日なら。
1日か2日という但し書きは、わたしの本音である。

自然以外は何にもないことを売り物にしている島や田舎が時折ある。
まだ開発の手が入っていない山などもそうだが、そこに行けば、
多分わたしなら1日で死ぬほど退屈してしまうだろうと思う。

その点都会の管理された公園とか、
ホテルのロビーにしつられられた自然を模した鉢植えの木とか、
深海をイメージした巨大な水槽などを見るのは退屈しない。

本物でなくても、緑のなかにカモフラージュされたスピーカーから
静かな音楽とともに小鳥が定期的にうつくしくさえずってくれると、
なんとなくやさしく癒されたような気分になる。

一流ホテルのロビーならごつごつとした岩の代わりに、
いかにも座り心地がよさそうなソファがあちこちに配置されている。
このようなソファーに体を沈めてゆっくりと小説を読む時間が、
わたしの至福のひとときである。

堂々と胸を張って入れば一流ホテルのロビーというのは
読書が楽しめる穴場なのである。
たまには千円近くもするコーヒーを頼むこともあるが、
まぁ何も頼まないときの方が多い。

こんなわたしの趣味に最近もう一ヶ所お気に入りの場所が増えた。
話題になっているJR大阪駅に隣接されたグランフロント大阪。
南館と北館。地上38階、地下3階の大規模な双子のビルである。

あたらしもの好きのわたしは開業した時からあちこち見て歩いた。
基本的なコンセプトはおしゃれで大規模なショッピンクセンターであり、
あらゆる種類の料理が楽しめるレストラン街なのである。

ショッピングにも高価な料理にもまったく興味がないわたしなのだが、
人工的に作られたテラスガーデンは気に入った。
空中庭園のような9階にある南館の庭。
北館のはずれ、地上にしつらえられた4000平方メートルもの緑の空間。

小道に適当に配置された黒い御影石のシンプルなベンチ。
人工的な小川がビルの周りをぐるりと取り囲むように流れている。

木陰になっているベンチに座り、鞄から読みかけの小説を取り出す。
適当なビル風が爽やかに吹きわたり、聞こえてくる水音や小鳥の声は
ホテルとは違って本物である。

ベンチのそばにはかわいい紫陽花が咲いていて、
まわりの木々を見上げるとその向こうに近代的なビルが林立している。
洗練された大都会の人工的空間。
わたしにとっては何もかも忘れて集中できる快適な読書空間でもある。



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sceneryの風景

会社をリタイアしてから土曜日になれば大阪にでかけるという習慣を
もう5年近くも続けている。

わたしの友人にいわせれば「よく飽きないものだ」と感心されるが、
飽きるどころか益々わくわくとすることが多い。

基本的には大都会の刺激が大好きなのである。
彦根城の周りをのんびりと散策するのは割合に飽きてしまうが、
人がごちゃごちゃとひしめいている地下街を歩くのは飽きない。

それにこの5年間、刻々と変貌して行く大阪キタのあたりを
目の当たりにできたのはラッキーだったと思っている。

常にどこか工事中で不便や不満もあったが、
一新された大阪駅に続いてグランフロント大阪のような施設ができると、
これが大都会のダイナミズムだと思うし、
歴史に立ち会ってきたような実感がある。



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