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　　　　　　　　　　　　日常の風景　　　NO.0310
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クリスマスの幻想

クリスマスイブに大阪にある一流のシティホテルが
信じられないような手頃な価格で予約できたと
相棒から聞かされたのがつい最近のことだった。

老夫婦がいまさらクリスマスにシティホテルでもないだろうと
一瞬は思ったが、年甲斐もないからこそなのかもしれない。
茶目っ気のあるこのようなサプライズは大歓迎なので
すぐに泊まることに相談がまとまった。

ところがイブの朝、彦根は２〜３ｃｍの雪が積もる一面の銀世界。
雪がまだ降りしきるなか、彦根駅までの車の準備をするだけでも一苦労だった。

駐車場から駅に向かう途中に琵琶湖に通じている大きな港湾がある。
昔はこの場所から琵琶湖めぐりの観光船が出発していた。
今はもう何もない。ただ湾だけが残り、
ブラックバスやブルーギルなど外来魚の絶好の釣り場となっている。

行き交う人も誰もない雪のクリスマス。
さくさくと雪を踏む自分の足音だけが凍えるように響く。
ふと港湾に目を向けると水面からおびただしい霧が発生していて
さながら地上に降り立った白雲のようだった。

霧に目をとられて気付かなかったのであるが、
この寒い早朝に微動だにしない釣り人もいた。
それもひとりではない。
１０メートル置きぐらいの間隔で釣り人が霧の港湾を取り囲んでいる。

色のない幻想的な墨絵のような世界だった。
まわりの時間が止まっていた。

ＪＲ環状線の京橋にあるシティホテルは、大阪城がすぐ近くに見える。
部屋の窓からはメトロポリタンの見事な夜景が見える。
イブの夜という特別な理由もあるのだろうが、
百万ドルの夜景と言われた香港の夜景よりも鮮やかで華やかに感じられた。

高層ビルに設置されている航空障害灯の赤いランプの点滅が、
ビルの輪郭を形作り、シンプルで雄大な夜空への落書きに見える。
その下にあるビルの立体的な窓明かり。

繁華街のイルミネーション。道路に沿った街路灯。
大阪駅の近くにある大きな丸い観覧車のイルミネーションが
まるで色彩のコンダクターのように定期的に赤や青や白にその色を変化させる。

ホテルの真下には寝屋川が流れビルの明かりを
モザイク画のようにきらきらと反射していた。

夜の私たちは間違いなく色彩の渦の中にいた。
朝と夜。まったく正反対の風景。
この落差こそがクリスマスの幻想なのかなとふと思った。



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ｓｃｅｎｅｒｙの風景

これだけ歳月の流れが早く早く感じられるようになると、
幼いころにお伽噺として聞かされていた浦島太郎の話が、
どうも現実の話のように思えてきます。

太郎は玉手箱を開けた途端、玉手箱から煙が出てきて
たちまち老人になるのですが、
竜宮城での夢のような世界という素敵な思い出も持っているわけです。

人生も玉手箱のようなものかもしれません。
すこしはいい時代の思い出もあって、
たちまち年を取ってしまうというような・・・

日常の風景。今年最後の配信になります。
みなさまいいお年をお迎えください。



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