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            日常の風景   NO.0315
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音楽と文学

村上春樹が「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」という題の
新作を出版するというだけで読者が本屋に行列を作り、
それがNHKのニュースにもなる。

出版社の話題作りのうまさもあるのだけれど、
わたしも世間の波に乗って出来るだけ早く読んでみたいと、
この間から彦根図書館のHPを毎日チェックしているのだが、
まだ予約できる状況にはなっていない。

その代わり「小澤征爾さんと、音楽について話をする」という
2年ほど前に出版された本が借りられる状態で、
図書館の書架にあることがわかった。
この本も前から読みたかった本なので早速借りてきた。

内容は村上春樹が小澤征爾にクラッシック音楽について
いろいろと質問をする形をとっている。
村上春樹の音楽に対する造詣の深さ、耳の確かさ、センスのよさ、
その洗練された知識にはほんとうに驚かされた。

机上の知識ではない、彼はコンサート会場にも足を運び
レコード、CDを本当に何度も聴き込んでいるのだ。
彼の小説には常に音楽が流れている感じがしたがこれで納得できた。

この本のなかでも春樹は説明している。
「音楽的な耳を持っていないと、文章ってうまく書けないんです」
「いちばん何が大事かっていうと、リズムですよね。文章にリズムがないと、
そんなもの誰も読まないんです」

村上春樹は意識的に文章に音楽のリズムを浸み込ませている。
それはほんとうにわたしにもよくわかるのである。
彼の文章の背後には音楽が絶え間なく流れていたのだ。

わたしはクラッシック音楽を聴くのも好きだが、
好きなだけであまり詳しくない。
曲を聴いてもよほど有名な曲でない限り曲名もわからない。

しかし「小澤征爾さんと、音楽について話をする」という本には、
具体的な曲名が次々と出てくる。
たとえばベートーベンのピアノ協奏曲第三番の第二楽章について
いろんな指揮者やピアニスト、それに小澤征爾の経験などをからめ書かれている。

曲がわからなくても読み物として非常に面白いのだが、
読み進めてゆくうちにメロディやリズムがどうしても知りたくなる。

ふと思いついて、YouTubeで検索してみると、
ベートーベンのピアノ協奏曲第三番は世界中で山ほどアップされている。
楽章まで指定できるのである。

聴いてみるとただ曲名を知らなかっただけで耳になじみのある曲である。
便利な時代になったものだと思った。
それからは本のなかであたらしい曲名が取り上げられるたびに、
YouTubeを利用して話題の音楽を鳴らしながら本を読み切った。

時間はかかったが、すごく充実感のある読み方だった。
クラッシックファンの方、この本はお薦めです。
ぜひ読んでください。



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sceneryの風景

3年前の本「1Q84」をわたしは日常の風景で2回も取り上げている。
「ヒルトンで読書」http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/sample/10-1/hiru.html
「1Q84」   http://www6.ocn.ne.jp/~scenery/sample/10-1/1984.html

そのなかからわたしの文章を引用すると

「1Q84」のなかでテーマミュージックのようにして繰り返し出てくる、
ヤナーチェクのシンフォニエッタを本格的に聴いてみた。
わたしの想像していた音楽とはまったく異なっている。

トランペットのファンファーレから始まる曲の出だしは、
確かに印象的で一度聴けば忘れられない。
スメタナ以上にチェコの土着的なメロディと形式で、
今までのヨーロッパ系の音楽の流れとは全く違い、
村上春樹らしい選曲だと納得させられた。

今朝の新聞によると、
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」のテーマ曲は
リストのピアノ曲集「巡礼の年」らしい。
たちまち対象のCDは在庫切れになったようだ。

でもこの曲もyoutubeで検索すればかなりの曲は聴けます。



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発行者 scenery
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HP 日常の風景
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