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            日常の風景   NO.0320
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渋温泉の花火

息子からお盆休みの旅行の行き先を「渋温泉」
と聞かされたときの第一印象はへー、どこの温泉?どこにあるの?
というものだった。
今までに一度も出かけたことのない温泉である。

3泊4日の家族旅行。
渋温泉はちょうど2日目の宿泊先だった。
信州にある渋温泉は正式には「湯田中渋温泉郷」と呼ばれる。

お盆の真っただ中の旅行は、高速道路の渋滞も多少の覚悟はいると思っていたが、
実際はそれほど深刻な状況でもなかった。
むしろ、お盆にともなう温泉各地での行事がめずらしく、
連日盆踊りや露天やバザー、打ち上げ花火などを楽しむことができた。

渋温泉は歴史ある9つの外湯が有名で、
石畳の小道の両脇には、昔ながらの小さな木造旅館がずらりと並んでいる。
大きなホテルはない。

旅館での夕食が終ると、宿泊客は旅館の下駄をはき、浴衣を纏い、
歩行者天国になっている小道に足元をカラコロと鳴らせながら繰り出す。
まだ射的場が健在している温泉情緒たっぷりの温泉だった。

素敵な温泉場の雰囲気をより演出するために、
街のみんながボランティアで頑張っている姿があちこちで見られた。
子供たちが退屈しないようにいろんなエンターテイメントも考えてくれている。

調子のよい太鼓のリズムに誘われるように、
川沿いにある盆踊り会場にも多くの宿泊客が向う。

会場で踊りを見ながら生ビールをたらふく頂き、
いい気分になって、そろそろ引き上げようかという終盤、花火大会があった。
渋温泉の花火大会は夜空にドンと打ちあげる本物ではなく、
おもちゃの花火を大人や子供達に配って、
その場でそれぞれが火をつけるささやかなものだった。

しかし振舞われる花火の本数が半端ではなかった。
火が消えると、次々とあたらしい花火が手渡される。
孫達だけではなく大人もノスタルジーを感じながらしっかりと楽しんでしまった。

そういえば、子供のころ家の庭で両親と楽しんだ線香花火。
友人とキャンプファイアーを背にしながら点けた花火。
楽しかったがどれもこれもが物足りなかった。
終わった後の寂寥感がたまらず、哀しかった切なかった。
もっともっと思い切り花火を続けたかった。

見知らぬ温泉客同士が互いの花火の先端をくっつけ合い、
種火のやりとりをなごやかに繰り返しながら、
充分すぎるほど花火を堪能したのは、生まれて初めてのことだなぁと思った。

実にいいアイディアである。
どれだけおもちゃの花火を大量に振舞っても、
費用はドンと上がる本物の花火、1発か2発分で賄えるのだから。



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sceneryの風景

お盆休みには、息子が旅行の全計画を立てて、
費用は全額親が支払うという旅行のスタイルが我が家で定着しつつある。

息子の計画は3泊4日で信州のひなびた温泉を巡るという豪儀なものであった。
それに今年は娘夫婦も休みのスケジュールが合ったので、
同行することになった。

わたしたち夫婦と、子供夫婦、それに孫が3人。
総計9人、車2台を使用しての家族旅行になった。

親とすれば費用の問題が若干頭の痛いことではあるが、
それ以上に家族の全員が揃って旅行できるということが、
何にも増して嬉しいことだった。



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