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            日常の風景   NO.0321
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八重を訪ねて

「もう昼間から」と軽く睨む家内の視線をわざと外しながら
生ビールのお代わりを頼んでいた。
ここは京都。河原町丸太町。
交差点の角っこにある、とんかつ専門のレストランである。

とんかつの店にはあまり相応しくない甘いジャズが流れている。
テナーサックスの官能的なメロディと生ビールに軽く酔いながら、
新島襄や新島八重それに山本覚馬のことなどを考えていた。

つい先ほどここから目と鼻の先にある
新島襄の旧邸を見学してきたばかりである。
そしてこの後、女紅場址の石碑を訪ねる。

今日は一日NHKの大河ドラマ「八重の桜」のヒロイン
新島八重が歩いた道を家内とふたりでなぞるつもりなのである。

司馬遼太郎の小説の大ファンだったので、
日本の歴史については家内よりわたしの方がかなり詳しいと思う。
しかしNHKの大河ドラマが始まるとその時代に限り立場は逆転する。

家内は大河ドラマが始まる前には
必ずドラマの背景が詳細に解説してある分厚い雑誌を購入して、
愛読する。熟読する。今はやりの歴女に変身するのである。

久しぶりの京都も家内に誘われた。
多少の混雑は仕方がないと割り切れば、旬のときに、
旬の場所を訪ねるという旅も悪くないと思う。

八重の旅に特化したわかりやすい地図。豊富な展示物。
熱の入った詳細な解説。
ドラマの舞台が京都に移った旬の今だからこそである。

「八重の桜」はかなり正確に実際のエピソードをドラマに取り込んでいる。
八重と同じ道を具体的にたどったので、
これから見るドラマはテレビ画面からはみ出て
立体的に360度の広がりを持つような気がする。



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sceneryの風景

今回の日常の風景はNHKの大河ドラマ「八重の桜」を見ていない人には
ほとんど興味のない内容になって申し訳ありません。
最初にそのことをお詫びしておきます。

女紅場址の石碑の次は、同社大学を訪れ、薩摩藩邸跡の石碑を見て、
御所の蛤御門までかなりの距離を歩いた。

新島襄も八重の一本筋の通った生き方にも興味があるが、
八重の兄である山本覚馬により興味を魅かれる。
飛び抜けて頭脳も明晰だったのだろうが、
よほど人を魅きつけるカリスマ性があったのだろう。

そうでなくては視力を完全に失くしたのに、
京都の復興のためにあれだけの仕事はできないと思う。

西郷隆盛から京都の薩摩藩邸の跡地をまかされたのも不思議である。
私欲のない英雄はやはり同類の人物がわかるのだろうか?
結局は薩摩藩邸跡が同志社大学になったのだから、
西郷隆盛も正しい人物に跡を託したということになる。

同志社大学は若き日に通信大学での単位を取得するために、
何度も何度も通った場所である。
その場所を改めて観光するなんて夢にも思わなかった。

同志社大学の史料室展示展で得た小冊子に、
人間、新島八重の面白い逸話が書かれていたので紹介する。

ドラマにもよく登場する山本覚馬の後妻の時栄(ときえ)である。
目の不自由な覚馬をかいがいしく世話する良妻だったと思う。
が、時栄が後年ある不祥事を起こす(具体的な内容は不明)

そのとき襄はそれを許そうとしたが、
八重はがんとして「ならぬことはならぬのです」と妥協しなかった。
結局、時栄は八重のために離縁をさせられている。
八重には会津に残った先妻、うらのことが念頭にあったのかもしれない。

このことは多分ドラマには取り入れられないだろう。
芯の強い八重らしいエピソードだと思った。



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