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            日常の風景   NO.0358
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歯車が回るまでに

日常の風景357号「ささやかな抵抗」で紹介した
なかにし礼の詩作「平和の申し子たちへ」の内容で、
一番重要な部分は、以下に示すこのパートだろうと思う。

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ああ、若き友たちよ!
巨大な歯車がひとたびぐらっと
回りはじめたら最後
君もその中に巻き込まれる
いやがおうでも巻き込まれる
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歯車がひとたび回り始めたらもう誰にも止められないし、
また世間を気にしすぎる日本人の体質はほぼ単一民族ということもあり、
歯車を回しやすい宿命を背負っている。

わたしには忘れられない体験がある。
昭和天皇が崩御されたときのことである。
気分が高揚しているお正月明けにもかかわらず、
街からは一切の音楽が消え、テレビのコマーシャルも流れず、
パチンコ屋や飲み屋のドアも長い間閉じられたままだった。

崩御されたその日から日本中の雰囲気が突然ガラリと変わったのである。
これが「巨大な歯車がひとたびぐらっと回りはじめたら」の
感覚的な具体例。わたしの戦慄の源である。

大声を出すような人はもう誰もいない。
みんながみんなまるで呪縛の魔法にでもかけられたようだった。

日頃は反社会的な暴走族でさえ、一台のバイクも走らせなかった。
日本中がシーンとしている中で、
暴走族こそは自分たちの存在を世間にアッピールする絶好のチャンスだった筈だ。

静寂を破って騒音を日本中にまき散らすような元気が
あのとき彼らにあれば、また別の意味で彼らを見直したかもしれない。
回り始めた歯車の前では彼らも又なすすべはなかった。

日本の社会はある日を境に劇的に変化する。
そしてひとたび変化すれば全員その渦の中に巻き込まれる。
もう誰一人として批判的な発言はできなくなる。

そんな民族的欠陥を一人ひとりが自覚する必要がある。
だからこそ平和憲法の枠組みを変えることには
慎重の上にも慎重であるべきだと思う。

憲法学者のほとんどが違憲だとの見解を示す今回の安保法案。
自民党の意見に賛成する数名の憲法学者は
たとえ国が徴兵制を実施したとしても、
憲法違反には当たらないという過激に偏向した学者である。

わたしの可愛い孫の世代に禍根を残さないためにも、
世論の力で何とか良識ある結論に修正されるよう心から願っている。



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sceneryの風景

日常の風景では意識的に政治的なコメントは書かないようにしてきた。
特に本文ではほとんど書いていないはずである。

世の中は暗いニュースであふれているので、
せめてわたしぐらいは能天気な明るい出来事だけを選別して
書いてゆきたいと意識していたからである。

だが参議院で安保法案の審議が始まった今回だけは特例。
孫の将来を考えると居ても立っても居られない仕儀だとお許しください。
それこそ「巨体な歯車が回るまでに」である。

近未来のわたしの悪夢。
尖閣諸島をめぐって、中国海軍の駆逐艦と海上保安庁の船が小さな衝突を起こす。
日本の世論やマスコミは中国批判一色に染まる。

そんなどさくさに紛れて、
日本政府は政府批判の舌鋒鋭い、辻本清美を逮捕する。
政府はずっとこのような機会を狙っていたのである。
罪名は機密保護法違反。

続いてあくる日、有名なテレビのコメンテーターが逮捕される。
彼も政府の政策を鋭く批判することで有名だった。
これまた罪名は機密保護法違反である。
この法律は政府の権力で自由に罪状をでっちあげることが出来る。

もうこれだけのことで日本の雰囲気は一気に変わる。
もう政府批判をするものは誰もいなくなる。
勢いのいい中国を叩けと言う元気な声だけが日本中に満ちる。

そして・・・・



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