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            日常の風景   NO.0354
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白馬の露天風呂

10人ぐらいは一度に入浴できるほどの広さはあるが
造りは実に素朴な野性味のある露天風呂だった。

湯船のまわりは人ひとりが座るのにちょうど具合がよさそうな
平べったい漬物石のような石が並んでいて、
湯船の奥に設置されているごつごつと積み上げられた自然石の間から
絶えず温泉が注ぎ込まれている。

シンプルだったが空間の広いこの上ない開放感のある露天風呂。
屋根付きだが、高い柱で持ち上げられていて、
屋根が少しも気にならない。

むしろ2本の柱が空間を切り取り、焦点を目の前の白馬三山に合わせている。
自然を鑑賞する見事なフレームの役割を果たしていた。

ホテルには6連泊したので、
一日に最低3回はこの露天風呂を利用したことになる。

山にはあまり興味がなく、ほとんど山オンチのわたしだが、
最後の方には、初めて来たホテルのお客さんに、
「今雲の間から尖った頂上が見えてますよね。あれが白馬鑓ヶ岳。
本来ならその右に杓子岳そして白馬岳が見えるのですが今日は少し残念ですね」
と解説ができるぐらい頭に焼き付いてしまった。

それにしても白馬三山を真正面に捕らえる見事な眺望の露天風呂である
左側には八方尾根のすそ野が広がり、
長野オリンピックで使用された鮮やかなグリーンのジャンプ台が目立つ。
ラージヒル、ノーマルヒルと2本並んでいるので余計に目立つ。
船木選手や原田選手の活躍に興奮したのを今でも覚えている。

しかしながらこの眺望のよすぎる露天風呂、欠点がなくもない。
湯船は広くても、山を真正面に見られるポジションというのは決まっている。
山に向かって4人ほどが一列に並べばもうそれでいっぱいになってしまう。

宿泊客は適度に湯を使い、体が温まってくると、自然に立ち上がる。
立ち上がると例外なく一歩でも山に近づこうとするのである。

湯船の中央の特等席でゆっくりと温泉を楽しんでいるわたしの目の前に
こうして山だけではなく人の尻が並ぶことになる。
この6日間でいくつもの尻を見せられた。

これが若い女性の弾けるような白いお尻ならずいぶんと楽しいシーンなのだが、
平日に連泊するような宿泊客はリタイアした老人ばかりである。
垂れてたるんだシワの多い色黒の老人の尻。

仔細に観察すればみんなそれぞれに個性があって
面白いと言えばまあそれなりに楽しめた陳列だったのだが。



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sceneryの風景

わたしたちが宿泊した白馬ハイランドホテルです。
http://www.hakuba-highland.net/
スタッフのやる気が伝わって来るいいホテルでした。
安い料金設定の時にぜひ一度訪れてください。お勧めします。

梅雨時だし6日間も連泊すればきっと退屈し切ってしまうのだろうと予想していた。
だからわたしも家内も旅行前に図書館に行き、
ホテルで読める本を鞄に入れて5〜6冊持ち込んだのである。

だが実際に読み切ったのは2冊ずつに過ぎなかった。
テレビはほとんど見なかったが、時間の使い方に困ることはなかった。
退屈はしなかったのである。

長期間の連泊ということでホテル側が毎日いろいろなイベントを用意してくれていた。
朝の散歩。星空観測会。白馬近辺のDVD上映会。写真のスライド上映会など。
それぞれホテルのスタッフの丁寧な解説付きである。

朝はホテルが近くの名所までバスで送迎してくれた。
白馬駅にも毎日バスが出たので、JR大糸線の利用も便利だった。
朝夕のバイキングの食事もなかなか豪勢だったし、
旅費を含めてひとり5万円という破格の料金を考えれば、
とても満足できる旅行でした。



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