*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            日常の風景   NO.0347
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

ホットケーキ半額

家内が飲み物やケーキなどがカラフルに載せられている広告を
ひらひらとわたしの目の前で振りながら
「ホットケーキ、食べに行こう」と言った。

昼食前にもかかわらず台所に立つ気配もなかったし、
昼食代わりにという意味が以心伝心で伝わる。
家内から外出の提案があったときには
よほどのことがない限り断らないようにしている。

喫茶店での昼食。
雰囲気のいい場所での熱くて香ばしいコーヒーとホットケーキ。
身体の栄養にはならないが、心の栄養にはなる。

目的の喫茶店はほぼ満席のお客であふれていた。
家内がやおら広告を取り出し指差しながら注文する。
「コーヒーにこのホットケーキ、それにわたしはサンドイッチももらうわ」

ところが店員は気の毒そうな顔で
「これ、うちの店の広告とは違います」といった。
この店もよく割引券を出していて、今までに何度か来たことがあるので
よく確かめもせず、ふたりとも完全な勘違いだった。

「どうする?」とわたしが家内にきくと
「止める」と即答してきた。
店員も苦笑いしている。
こんなシーンで臆面もなく止めると言えるのは老人力がついてきた証拠だろう。

親切な店員だった。
「この店の場所わかります?」
と聞いてくれた。
「よくわからない」
と返事をすると親切に行き方まで教えてくれた。

広告の店は空いていた。
ほとんどお客がいない。
場所も悪くない、雰囲気も悪くない。
先ほどの店はほぼ満員だったのになぜこんなに差がつくのだろう。

窓側の明るい丸いテーブルにゆうゆうと腰をおろしながらそんなことを考えた。
自動車でしょっちゅう走る道路なのに
カフェの窓越しに見るとまた別の景色に見える。

雰囲気のいいカフェのテーブルにふたりが座っていても、
若い時のようにはこれという話題は思い浮かばない。
お互いにただ黙っていても雰囲気を変えるということはいいことである。

今日の失敗、もし日常の風景に書くとすればどのように書けばいいのだろうと
おいしいコーヒーとホットケーキを楽しみながら
ずっとそんなことを考えていた。



----------------------------------------------------------------------
sceneryの風景

後藤さんがイスラム国によって処刑された日は
たまたま中学時代のミニ同窓会の当日だった。
二か月に一回、20人前後の同窓生が集まって昼食をとる
という行事がすっかり定着した。

わたしはテレビで編集された映像しか見ていなかったのだが、
同窓生の内ふたりも、イスラム国が配信した直接の映像を見ていた。
首のない後藤さんが、自分の首を抱いている写真だったそうだ。

話を聞いただけで吐きそうになった。
直接見なくてよかったと思った。
この種の写真はトラウマになる。
わたしは三島由紀夫が切腹した直後の凄惨な写真を今でも忘れることが出来ない。

それにしても後藤さん。
志の気高さは見事でした。頭が下がります。
誰にでも真似のできることではありません。

しかし「蛮勇」だったと言われても仕方がありません。
日本の政府は3度に渡って、行かないでくれと頼んでいます。
特に最後の警告は外務省の職員が直接面会して止めています。

この「蛮勇」によって一説によりますと、
10億円以上の血税が使われたとか。

混沌とした事情や歴史的な背景もよくわからない政府が、
単純な善悪の物差しで肩入れするのも、
問題をますます複雑化するだけのような気がします。



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/

----------------------------------------------------------------------
日常の風景が本になりました。ご覧ください。
http://www.geocities.jp/scenery_jp2/book/book.html

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『めろんぱん』 (マガジンID: 2179) http://www.melonpan.net/
『メルマ』  (マガジンID: 50779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)   http://www.mag2.com/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/ からお願いします
----------------------------------------------------------------------