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            日常の風景   NO.0353
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鍵を捜す

ボランティア活動を終えて家に帰ってくると、
家内がすこし青い顔をして家中を捜しまわっている。
「何を失くしたの」と聞くと、
「家の鍵」という。
それは大変だとわたしも一緒に捜し出す。

大分前のことになるがわたしも鍵を落としたことがある。
わたしの場合は鞄を落とし、その中に家の鍵も入っていた。

安物の古い鞄で中には財布も、金目の物も何もなく
簡単に諦められる落し物だったが、ひとつだけ重要な問題があった。
わたしの名刺が鞄の中に入っていたのである。

名刺にはわたしの家の電話番号が書いてある。
電話番号が分かれば住所は簡単に特定できる。
住所がわかりその家の鍵を悪意の誰かに持たれたと考えると
気が休まることはない。不安が間断なく続くのだ。

数日待ってもし鞄が出て来なければ、
ドアの鍵を取り替えるしかない。
わたしの鍵は鍵屋ではコピーのできないマグネット式の特殊なもので、
会社に問い合わせてみたら、ドアごと交換する必要があるらしい。
確か20万円以上の費用が掛かると聞かされた。

その時点で青くなり、非常に高価なものを落としたのだという事実にはじめて気づいた。
幸い数日おいて警察から連絡があり、鞄はわたしの手元に戻った。
「こんなにいただく理由はありません」
と遠慮する届け出てくれた家の人に、
かなり多めのお礼を置いてきたのにはこのような理由があったからだ。

家内と一緒に家中を捜してみたが、やはり鍵はどこにも見つからない。
「お城の周りを散歩していたから、その時に落としたのかもしれない」
と家内が言い出した。

「これだけ捜しても見つからないということは、その可能性もあるよね」
とわたしも賛成をする。

あくる日になってから鍵の落し物が届けられていないかと
お城の事務所に家内が連絡を入れた。
親切な担当者でいろいろと当たってくれたが、それらしいものはない。
とにかく住所と電話番号を伝えて、出てくれば連絡をもらえるように手配した。

その次の日、今度はわたしが警察署に連絡を入れるつもりでいた。
だが鍵は突然、偶然に家内が発見した。
金庫の鍵のケースに入っていたという。

金庫の鍵は大切なものなので、ケースに入れて引き出しの奥深くに隠している。
そんな場所は誰も思いつかない。
でもこの後で二人は涙が出るほど笑った。

鍵が家の中から出てくるのは当たり前のことだった。
鍵でドアを開けない限り家内は家には入れなかったのである。
家の中に入ったということは、鍵は外ではなく家の内のどこかにあるのは確実。
そんな当たり前のことに最後の最後まで二人とも気づかず大騒ぎをしていた。

老夫婦がふたりで暮らす現実はこんな塩梅である。



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sceneryの風景

わたしの家には旅行会社から山ほどのパンフレットが送られてくる。
今までの実績というか記録がデーターベースとしてあちこちに残っているのだろう。
一般商品の広告はほとんど見たことがないのだが、
根が好きなものだから、旅行のブックレットはよく見る。見ているだけで退屈しない。

今回目についた広告があった。
長野県白馬の温泉で6泊7日の湯治旅。
これが安い。早速家内と相談して6月の旅として申し込んだ。
北陸新幹線を含む一切の交通費や毎日朝夕の食事がついてひとり5万円。
厳密にいえばひとり税込みで49980円。

自宅にいたとしても発生する生活費、一週間分の食費や光熱費を差し引くと
信じられないほど安いと思いますが、一週間朝から晩まで家内とにらめっこ。
さてさてどんな旅になりますのやら。

宿はこんな宿です。
http://www.hakuba-highland.net/

一週間も滞在すれば、エピソードのひとつやふたつは必ずあると思いますので
旅の様子はまた日常の風景で紹介できると思います。



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発行者 scenery
north@arion.ocn.ne.jp
HP 日常の風景
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/

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日常の風景が本になりました。ご覧ください。
http://www.geocities.jp/scenery_jp2/book/book.html

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