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            日常の風景   NO.0360
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他人への親切

駅前の美容院に家内を車で迎えに行く。
普通の美容院に比べてかなり値段が安い上、
明るくて、清潔で、手早いのでかなり人気のある美容院である。

家内が助手席に乗り込んでくるとかなりご立腹だった。
わたしの車を入口近くの椅子に座って待っているとき、
かなり慌ただしくひとりの婦人が店に飛び込んで来たのだという。

「11時までにできる?」
というなり、そのまま待合の椅子に座りこんだ。

家内は自転車で来た婦人が自転車のカゴには荷物がそのままだし、
自転車の鍵も掛けずに店に入ったのを目撃したので、
婦人にそれを注意すると、じろっといちべつされ、
「そのままで結構です」
と言われたのだと嘆いた。

かなり傷ついているのがよくわかったので
わたしも一緒に「何ちゅう奴や」と一緒に怒っていたが、
実はわたしも最近これによく似た経験がある。

大阪の地下街を歩いているときのことである。
前を歩く若いカップルの女性の靴紐が解けて、
彼女が歩くたびに、靴紐の先がペタペタと地下街の道路を叩いている。

靴紐を踏めば転ぶ危険性があるので、
わざわざ足を速めて、そのことを注意すると
「知っています」との一言が返ってきた。

「危ないと思うけどなあ」
と自分へのつぶやきのような言葉を残して早々にその場を立ち去ったが、
人の親切に対してなぜ素直になぜ
「ありがとう」の一言が言えないのだろうと思う。

次に同じような場面に出くわしたとき、
もうばからしいので他人にはかかわらないでおこうと思う人が出るかもしれない。
庶民レベルのこんな小さな体験の積み重ねが
時代の雰囲気を作ってゆくような気がする。

それから2、3日してからのことである。
家内がニコニコしながら散歩から帰ってきた。
散歩の途中で郵便局の外務員が郵便物を個人のポストに入れようとしたとき、
一枚の葉書がうまく入らず、玄関前にハラリと落ちたのを目撃したのだという。

外務員はそのことに気が付かず、
そのままバイクで次の家に向かおうとしていた。
家内はそのことを伝えるべきかどうかずいぶんと迷ったらしい。
でも性分ですねぇ。結局そのことを伝えた。

葉書をもとに戻した後、局員からは丁寧にお礼を言われたらしい。
世の中はこのようでありたい。
美しい音楽のようにトントンと善意のリズムが伝わってゆくような。



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sceneryの風景

次々とメルマガ発行の会社がサイトを閉じています。
最初は8つのサイトから「日常の風景」をスタートしました。
読者も合計すると400人を優に超えていました。

ところが次々と発行会社が閉鎖されて、残る会社は
「まぐまぐ」と「メルマ」だけになってしまいました。
会社が閉鎖されるたびに読者が大幅に減少します。

閉鎖予定の「めろんぱん」も含めて現在の読者は200名ぐらい。
「めろんぱん」はわたしのメインプラットホームでしたので
今回の閉鎖で100名を切るかもしれません。
もう個人でメールマガジンを配信する時代は過ぎたのでしょう。

潮時かもしれませんが、
たとえ50人でも60人でも読者がいる限りは自分自身の楽しみとして、
細々と続けてゆきたいと思っています。

この調子で行けば、わたしが燃え尽きるまでに、
時代の流れで強制的に廃止せざるを得ないということになるのかも知れません。
それはそれで作者にとってはめでたい結末です。



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