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            日常の風景   NO.0352
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私の株必勝法

この間日経平均が2万円を超えた記念すべき日に、
持っていた株をすべて売却した。
大した持ち株ではなかったのだが、これできれいさっぱり株式の世界とはさようならである。

株式投資はかなりリスキーなものである。
持ち株の計算をすれば今現在大儲けの数字が出ていたとしても、
ある日突然大暴落しないという保証はどこにもないのである。

すつぱりと身を引いてから、はじめて儲かったか損をしたかがわかる世界。
だからこの方法が普遍性のある必勝法と呼べるかどうかはわからない。
非常に個人的なわたしの体験である。

元々切った張ったの世界はあまり好きではなかった。
だが50歳を過ぎてから通っていた大学の教授に
「皆さんは銀行にお金を預けておいて、利子がつくのを当然だとは思っていませんか?」
と問いかけられたことがあり、まともな返事を返せる生徒は誰もいなかった。

リスクを取れる人が世の中を進歩させ、経済を活性化させている。
安全な銀行の利子を当然のように受け取っているだけでは、
自分は安全サイドにいて、リスキーなことはすべて他の人にまかせるという態度に他ならない。

当時社会人でもあり大学生でもあったわたしは教授の言葉に触発され、
恐る恐る安い株をほとんど闇雲に10銘柄ほど買ってみた。

結果は最初からそんなにうまく行く訳がない。
わたしが持つ株価は多少の変動はあったがトータルとしては下がり続け
机上の計算では60万円〜70万円ぐらいの損失になった。
でもラッキーなことに1年もしないうちに株価は戻り20万円ほどの利益が出た時点で、
全ての株を売却して、もう二度と株には手をださないつもりだった。

ところが新世紀を迎えてから日本の株価は下がり続け、
日経平均が1万円前後をうろうろとする時期が続いた。
いくら日本の経済力が落ちたからといってこれは下がり過ぎ。
近いうちには必ず戻ると思い再び買うことにした。

わたしは今までに3度買い出動したが
最初にヤマ勘で買ったときを除いて自分なりに厳格なルールを決めた。
これから説明することがわたしのいう必勝法である。

第一は余裕のある資金で3年ぐらいは完全に寝かせる覚悟で投資する。
買う時期は日経平均が1万円前後まで下がった時(この15年間で3回あった)。
個々の銘柄の良し悪しは個人ではよくつかめないから危険を分散させる。
具体的に説明すると100円〜200円の株価の銘柄を千株づつ。
たとえわずかでも配当金がある銘柄を選ぶ。
会社の業種も分散させる。建築、化学、石油、鉄鋼、電機、輸送、流通、情報など。

この方法なら一社あたり平均150円で買えたとして、10社買っても150万円の投資額で済む。
日経平均1万円前後といえば株式投資の絶不調期に当たる。
買ってからもまだ下がる。三度が三度とも下がった。
底値がいつかは誰にも分らないからこの値下がりは覚悟の上である。
むしろ下がって当然。日経平均一万円前後の時に買えてラッキーと思った方がいい。

配当さえあれば株券は持っていても苦痛ではない。
銀行の利子に比べれば比較にならないほどの高配当である。
特に株価の安い株ほど投資金額に対する配当金の率は高くなる計算になる。

全てを売ってしまった今、株の世界にもうそれほどの関心はない。
ギリシャがディフォルトになろうが中国経済が減速しようが
それは世間一般のニュースであってわたしと直接の関係はなくなってしまった。

でも株式市場は今後も好況であって欲しいと心から願う。
わたしが再び買ってみようかというような場面にはもう出会いたくない。
儲かったとしてもやはりわたしは株式投資のような行為はあまり好きではない。
興味はあっても好きではないという投資に対するある種の距離感も必勝法には必要。



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sceneryの風景

書き忘れたが、買うときは3か月ぐらいを目途にじっくりと時間をかけて指値で買う。
株式投資の絶不調期であるから、
これと思う銘柄があれば20円〜30円ぐらい下値を指値しておくと
ある日思いがけず買えていたりする。

売ると決めたらすべての株を成り行きで売ってしまう。
2時間もあればすべての株の処分は終わる。
買うときは指値。売るときは成り行き。

わたしの株式投資、1万円で買って2万円で売ったというのは出来過ぎである。
わたしの実力からすれば1万5千円ぐらいで満足してもう売っていただろうと思う。
でも今回は安倍-黒田ラインという特別な政治環境があった。

安全保障関連法案や日米のガイドラインがまとまるまでは、
国債や税金、年金の資金までをつぎ込み、
なりふり構わずに何が何でも株価を支える必要が見て取れた。
国が直接株を買ってくれるのである。その点では心配することなく保持できた。
しかし、こんな人工的な力技の相場そんなに長くは続かないというのがわたしの判断。

株式の売買益には20パーセント以上の税金がかかる。
そのなかには震災の復興特別所得税も含まれている。
こうして具体的に税金を支払う立場になると、
投資家は震災の復興にかなりの貢献をしているという事実に改めて気が付く。

将棋の仲間に株の世界にどっぷりと浸かっている人がいる。
昨年ガンホというゲームソフトの会社の株を大量に持っていて、その株が暴騰した。
一日に1千万円以上儲かった日もあったと聞いた。

その人が毎日スーパーのお惣菜が半値になる時間帯を見て買い物している。
その人にとって多分リアルで手触りのはっきりとしたお金と、
株に投資するバーチャルな資金とは完全に別物なのだろう。

わたしが持っていた10銘柄の出世頭はその人に教えてもらった。
出世頭だけではない、ベスト3まで全部その人と将棋を指しながら
レクチャーされた株である。

結果からみれば、プロの勝負師はセンスが違うと認めざるを得ない。
昨年は億という金額を儲けたその人。億を損したこともあると言って笑っていた。
わたしが平穏に生きている常識の世界とは全く違う特別な世界。
儲かっても損をしても毎日が修羅の世界。心の平安は多分ない。



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