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            日常の風景   NO.0350
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雪の露天風呂

昨夜の満天の星空の元、野性的な露天風呂を楽しんだことが
まるで嘘のように湯原温泉の朝は一面の銀世界だった。
空からは粉雪が音もなく真っ直ぐに落ちてくる。

もう3月なのに、あ、ラッキーと一瞬そう思った。
雪に降られながらの露天風呂が朝の温泉で味わえる。
絵になる雪の露天風呂。なかなか経験できる機会は少ない。

勇躍、旅館の温泉に向かった。
ここの旅館は朝になると男湯と女湯が入れ替わる最近はやりのシステム。
露天風呂のつくりも昨日の風呂とは違う。

露天風呂は円い陶器製のつぼ湯が二つ。
四角いヒノキ造りの湯船がひとつ。
つぼ湯は一人用だし、ヒノキの湯船も二人ぐらいしか入れない。
どちらかといえば、プライベートな雰囲気のあるこじんまりとした露天風呂である。

人工的に作られた岩場の上に目隠し用の竹垣があり、
簡単な屋根もしつらえてある。
周りには椿が植えられていた。

そしてお目当ての雪である。
期待したほどには露天風呂に舞い落ちてはくれない。
外はかなりの雪が降り続いているのが見えているのに、
肝心の湯船にまでは届いてくれないのである。

たまにお情けのように、数辺の粉雪が迷い込んで来るぐらいで、
雪の温泉情緒を楽しむような雰囲気ではない。
そこらあたりはもう想像力で補うよりほかに方法はない。

屋根に積もった雪や、竹垣にこびりついている雪や、
現に降っている雪を目で追いながらぼんやりと湯に浸かっていると、
わたしの腕に突然、かなりの雪が落ちてきた。

頭の上の椿の葉に積もっていた雪が、
温泉の湯気で温まり、一気に落下したのである。

いくら雪を希求していたとはいえ、大量の雪が一気にドサリでは、
驚愕と冷たさを感じただけで,
情緒あふれる雪の露天風呂の雰囲気には程遠い温泉の朝でした。



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sceneryの風景

湯原温泉に泊まった前日は三朝温泉だった。
こじんまりとした家族向けの小規模な温泉宿。
夕食を終って部屋に帰ろうとすると、
売店にも受け付けのカウンターにも人がひとりもいない。

多分夕食時は忙しくて人手が足りないのだろうとは思うが、
それにしても売店からみやげものなどを失敬しようと思えば
盗り放題といえるほど無防備であっけらかんとしている。

こんな商売の方法が成り立つのは、世界中を見渡しても、
多分日本だけだろうと思う。

いろいろと問題も不満も山積みの国なのだが、
こんな景色をみれば、
わたしたちは実にありがたい平和な国に住まわせていただいているのだと
しみじみと感謝である。



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