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            日常の風景   NO.0365
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団鬼六

団鬼六という彦根市出身の作家をご存じでしょうか?
ある分野で高名な作家であるから知っている人がいるかもしれません。
一時期SMの世界で「花と蛇」「夕顔夫人」などが売れに売れた。
特異な官能世界を描くポルノ作家として記憶されている方も多いでしょう。

団鬼六の作品を置いている公共の図書館は少ないかもしれません。
だが彦根市立図書館の郷土資料のコーナには
この作家の全作品が保管されている。
その冊数は100冊以上にもなる。

手軽に読めるということもあり、実はわたしは隠れ鬼六ファンである。
ポルノ小説も嫌いではないが、好きなのは鬼六の随筆である。
将棋指し、やくざ、プロボクサー、相撲取り、歌手、俳優など
その幅広い交友関係を描いた随筆は読者を妖しい鬼六世界に引きずり込む。

構成が緻密な上に文章に情趣があり、
何よりも鬼六の人生そのものや、かかわった人たちが興味深い。
わたしがこれほど魅かれるのは多分体質が似ているからだと思う。
不思議なほど共通点が多いのである。

でも誤解のないように断っておきたいのだが、
鬼六の人格を直径10センチメートルの円にたとえると、
わたしは円は直径5ミリほどに過ぎない。
でも中に詰まっているものはかなり似ているという話である。

まず彦根市出身であるということ。
将棋が好き。鬼六は6段。わたしは2級。
英語が好き。鬼六は高校の英語教師、テレビの翻訳家でもあった。
文章を書くのが好き。
酒が好き。鬼六の酒の強さ酔い方はただ事ではない。
人間が好きで趣味も多くあらゆる分野に好奇心が旺盛。

鬼六の随筆を読めばすぐにわかるのであるが、
英語はもちろん日本の古典から漢文に至るまで
その知識、造詣の深さには舌を巻く。

鬼六が一時期、休筆を宣言したことがあった。
スポーツ紙の連載小説に描いた好色芸者のことを
「春風に煽られ、裾前がひるがえって鴇色(ときいろ)の蹴出しがチラとのぞいた」
と描写したところ若い担当者に意味が伝わらず、
ではそちらで適当に訂正して欲しいとたのんだところ、
「鴇色の蹴出し」が「ピンクの腰巻」に訂正されていたというのである。
鬼六がそれでは情感や風情がまるで感じられないと、
トラブルになり、休筆にまで拡大するのであるが
わたしが好きなエピソードではある。

彦根市出身というよしみだけではなく、
一度ぐらいは鬼六のポルノではなく随筆を読んでください。
わたしがぜひにと勧める随筆は「鬼六人生三昧」です。
ここには彼のエッセンスがすべて詰まっています。



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sceneryの風景

郷土愛というのはかなり強いものですね。
小説や映画で彦根藩主の井伊直弼が悪役に描かれていると気持ちがざらっとしますし、
歌手でも作家でもスポーツ選手でも
同じ郷土というだけで親しみがかなり増します。

短距離陸上競技の桐生祥秀選手も彦根市出身。
ジャーナリストで高名な田原総一朗も彦根市出身です。
この間は家内と散歩のついでに田原総一郎の生家をわざわざ訪ねに行きました。

訪ねたと言っても道路から家を見ただけです。
現在は総一郎の妹さんが住んでいると聞いたのですが、
田原総一郎という立派な表札も掛かっていました。

わたしもまだかなりミーちゃんハーちゃんの部分が
残っているのだと自覚しました。



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発行者 scenery
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