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            日常の風景   NO.0364
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孫と教室で

ピンポンと玄関のチャイムが鳴ったのでドアを開けると、
隣に住む小学6年生の孫の颯がにこにことした笑顔を見せている。
「おじいちゃん、英会話の本貸してくれへん」と言った。

本を借りに来た理由はよくわかっている。
今、彦根市立城西小学校にオーストラリアからお客様が来ているのだ。
19名の児童と3名の引率の先生。

そして今日一日は給食も含めて教室で孫と一緒に過ごした。
3日間ののボランティア通訳を依頼されたのである。
実用本位のいい加減な語学力なのだが城西小学校はわたしの母校でもあるし、
何とかなるだろうと思って気持ちよく引き受けた。

「颯、一日ぐらいでは英語は話せるようにはならんで、
教室で一緒やから話したいことがあればおじいちゃんに聞いたらええやんか」
とアドバイスをしたのだが、孫は半ば強奪するように本を持っていった。

あくる日の休憩時間、教室でちょっと驚かされるシーンを見た。
孫の机のまわりに同級生やオーストラリアからの児童も2名ほどが集まり、
喧々諤々の大騒ぎをしている。

孫の机の前にはわたしが昨夜貸した英会話の本がある。
質問事項を指で指したり、ごく簡単な英単語を口にするだけで、
互いに声を出して笑い合うような意思疎通が見事に成立しているのだ。

それにしても子供達のコミュニケーション能力には脱帽である。
互いに向かい合って相手の手と自分の手を合わせたり、
合間に自分の手を打ち合わせたりするシンクロナイズを楽しむ遊びがある。

歌に合わせて、リズムがあるしスピードも速いし、
わたしにはとてもできないゲームだが、
異国の子供たちはボディランゲージだけであっという間にマスターしてしまった。

子供達の遊びには通訳なんて必要ない。
それに第一子供の英語はよくわからないことが多いのである。
「颯のおじさん、鬼ごっこって英語でどういうの」
「えっ、ごめん知らない」
と、あわてて持参しているタブレットで調べる。
「プレイ タグって載ってる」と答えるよりも早く、
もうみんな鬼ごっこをして遊んでいた。

オーストラリアからきた先生たちとはいろんな話をした。
でもこれは通訳というよりはわたし自身が楽しんでいただけのことである。
英語のおかげで3日間も孫と同じ教室で過ごせた。
いろんな発見のある新鮮で得難い体験をさせてもらった。



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sceneryの風景

わたしも含めて大人達は自分たちの子供時代と比較して、
今の子供達これで大丈夫なのかなと本気で心配している。

孫がたまにわたしの家に遊びに来ても、
もっぱらわたしのパソコンやタブレットを使ってのゲームに夢中である。
塾に行くのが忙しくて、あまり友人と遊んでいるようにも見えない。

だからついつい
「わたし達の子供時代は・・・」と言いたくなるのだが、
学校の子供達を見ていて、そんなに心配することはない。
本質はほとんど変わっていないのだとある点では安心した。

変わったのは子供達ではなくて、時代が変わったのである。
もし、わたしの子供時代にパソコンゲームのようなあんなに面白いものがあれば、
間違いなく夢中になって遊んだに違いない。

教育の環境もいろいろと問題はあるのには違いないが、
準備がとてつもなく大変なのに学校が子供達のためにクロスカールチャルな
こんな素晴らしいプログラムを用意してくれる。
いい時代になったものである。

英語を勉強する何よりもいい動機づけができたに違いない。
子供達の英語の時間にもそばにいたが、
宿題のメモを見ながら
「わたしの誕生日は〜です」
「わたしの得意な科目は〜です」
「わたは〜をするのが好きです」
「わたは〜が嫌いです」
と全員が懸命に熱心に話をしていた。
わたし達の時代の英語の教科書「Jack and Betty」よりは高度な内容である。

最初に習った英語は今では落語ネタになっている。

I am a boy. ← 具体的に使う場面がない。

This is a pen. ← 見たらわかるやろ!!

とにかく教育も当然試行錯誤はあるのだろうが、
先生方の工夫努力のおかげで確実に進歩しているのは間違いがない。


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