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            日常の風景   NO.0375
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散歩帰りに

一日が長くなり、日中は陽射しが強すぎるので
夕方の5時をかなり回ってから散歩に行くことが多くなった。
家内は夕食の支度があるのでなかなか一緒には歩けない。

それでもたまには時間をやりくりして一緒に歩くことがある。
「散歩の帰りに一緒に何か食べてから帰ろうや」
という誘い文句が功を奏したようである。

わたしの散歩のコースはほぼ決まっていて、
家から彦根城に向かい、大手門から入り、天守閣のある山頂まで登り、
そして反対側の黒門に降りるというコースである。

家内はお城の坂道はきつすぎるというので、
大手門で右左に分かれ、家内は内堀に沿って黒門まで歩く。
待ち合わせの場所の黒門前で毎回ほぼびったしの時間になる。
最近はこの方法での散策が互いに気に入っている。

帰り道、いい汗をかいた後「ほっこり屋」という
親子丼が名物の店に立ち寄る。
有名な地鶏、秋田比内を使っているというのが売りで、
かなり高めの料金設定にもかかわらずよくはやっている。

掘りごたつのようになっているカウンターに座った。
長いカウンターテーブルの前には大きな透明のガラスがあり、
その向こうで職人が親子丼を作っている様が逐一見える。

目の前で誇りを持って、
流れるようにきびきびと働いている人の姿を目にするのは、
確かにかなり気分のいいエンターテイメントである。

注文を聞きに来た店員に親子丼を頼んでから、
「ビールも一本お願いします」
とついでのようにさりげなく頼んだ。
睨まれるのはわかっているから家内とは目を合わさずにそっぽを向く。

わたしにとっては親子丼も食べたいが、
散歩で汗をかき、火照った体を冷たくクールに冷やしてくれるビール。
こちらの方がメインなのである。

冷たいビールも親子丼も申し分なく、
さて勘定という段になって、ふたりとも財布を持っていないのに気づいた。
家内はわたしが誘ったのだから、わたしのおごりだと確信し、
わたしはいつものように当然家内が支払うと思っていた。

互いに顔を見合わせて苦笑いをするしかなかった。
人質として家内を店に置いて、財布を取りに家まで速足で歩く。

店に入る前に気が付いていたら、当然入らなかっただろうし、
ふたりとも気が付かなかったのがよかったのである。
機嫌よく食事が楽しめたし、それに何より大笑いのネタができた。



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sceneryの風景

最近、中谷彰宏という人が書いた「あなたにはツキがある」という本を
何となく手に取って斜め読みしてみた。

要約すれば日々に起きるちいさなツキを見過ごさずに意識して、
前向きに生きなさいというありふれた内容である。

でも一か所だけとても気に入ったフレーズがあった。
ツキというのは、
最初はマエナスに思える出来事からスタートすることが多いという。

今回の出来事も「あーツイていなかった」と考えることもできるし、
財布なしでも機嫌よくビールも食事も楽しめたのだから、
ラッキーだったと考えることもできる。

作者はちいさなツキ日記を付けることを勧めている。
わたしも数行でいいので気が付けばツキがあったことを書くようにした。
意識すればちいさなツキというのは日常茶飯事だし、
確かに一見マエナスに見えることからスタートしている。

実は今日の風景もツキ日記から拾って来たものである。



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