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            日常の風景   NO.0370
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シャボン玉の挨拶

散歩のコースで毎日見慣れている光景も、
建物が急に潰され消え去ってしまうともう前がどんな風だったのか、
昨日までの風景がまったく思い出せない。

人の記憶というのはかなりいい加減なものである。
これは若いときでもそんな風だったので、
一概に年のせいばかりとはいえない。

彦根市は城下町なので大通りから一筋路地に入ると、
昔の面影もまだ色濃く残っているのだが、
それでも新築のマンションができたり、民家が駐車場になったりと、
少しは変わりつつもある。

夕暮れ、わたしの散歩道にしている彦根城にも登ってから、
間もなく我が家に近づきつつあった路地裏で、
ふたりの少女がシャボン玉をして遊んでいるのを目にした。
小学の5年生か6年生ぐらいの少女。

古ぼけたうだつが連なり、
これまた色あせたべんがら格子がところどころに散見できる、
こちらはまだ江戸時代のなごりが残っている路地の道端だった。

ふたりはストローから大小さまざまなシャボン玉を空に放っていた。
本当にうれしそうだった。
楽しくてたまらないと生き生きとした表情だった。

通行人であるわたしにシャボン玉を見せたくて、
誇らしそうに絶え間なくシャボン玉を吐き出し続けた。

ひとりの少女とごく自然に目が合ってわたしが微笑むと、
「こんにちは」と大きな声でしっかりとした挨拶をしてくれた。
わたしももちろん「こんにちは」と返事をした。

年を取るとたったこれだけの触れ合いで、
ずいぶんと幸せな気分になれるものである。

少女とわたしの間には多数のシャボン玉が浮遊しており、
そのシャボン玉が今にも沈みそうな夕日のひかりを反射して、
きらきらと夢のような一瞬をつくった。



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sceneryの風景

広告のメールはほとんどスルーをしているのだが、
アマゾンからのメールは比較的目につく。
ネットを通しての商売や目の付け所は抜きに出ている。

一般の商品だけではなく音楽や映画等もアマゾンを利用することが多い。
そんなアマゾンが最近オーディブルというコンセプトを提案してきた。

小説を活字からではなく耳から読もうという提案である。
全く興味はなかったが何回かのメールを受け取るうちに、
ためしに一度覗いてみた。
3ヶ月間無料というコースがあったので申し込んだ。

これが意外におもしろい。
夜寝る前に電気を消してからベッドでタブレットを利用して
小説や随筆、講演などを聴くのである。

司馬遼太郎や池波正太郎などの時代小説は、
耳からだけの情報でも頭の中の映像はいきいきと動き出す。
でもあまり面白すぎるものはダメ。眠れなくなる。

短めの随筆が寝る前には適している。
もうひとつ発見があった。
フランス書院が発行しているようないわゆるポルノ小説。

この手の本は随分と長く読んだことがなかったのだが、
若い女性のプロフェッショナルが情感を込めて
官能的にポルノを読めば
これは本で読むより情報の媒体としては優れているかもしれない。

とにかくいろいろとあたらしい発見がありました。
興味がある方は一度試してみてください。
https://www.audible.co.jp/



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発行者 scenery
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