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            日常の風景   NO.0374
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宅老所の閉鎖

彦根市の福祉課に提出する書類を仕上げる時間はいつもの2/3で済んだ。
補助金を請求するために来年度の行動計画を作成したり、
収支予算書を書いたりする必要がなくなったからだ。

定年後約10年間続けてきたボランティア活動だけに、
一抹の淋しさももちろんあるが、正直無事に終了できてほっとしている。
充実したボランティア活動に長期間かかわれたことは幸運だった。

定年退職を迎えたその年に、自治会の総会で議長を頼まれた。
総会も無事に終わり、最後に形ばかりの議長挨拶があった。
そのときわたしはちょっと格好をつけた挨拶をしたのである。

今までは仕事が忙しくて地域社会にお世話になるばかりで
何の貢献もできなかったが、定年退職を迎え自由な時間ができたので、
これからはできるだけ社会に恩返しがしたいと。

そのあくる日である。近所の主婦から電話がかかってきた。
顔見知りではあったが、それまでにほとんど何かを話した記憶はない。
老人のお世話をしているボランティア活動を手伝って欲しいとのことだった。

昨日の今日のことである。断れる立場ではない。
わたしがボランティア活動にかかわるようになった
忘れられない思い出である。

最初所属したボランティアグループは大所帯だった。
ユーザーもスタッフもそれぞれ20人近くはいた。
でもここまで大きな組織だといろいろとあって解散せざるを得なくなり、
その後3つぐらいのグループに分かれた。

わたしたちのグループはスタッフが6名、ユーザーが10名ほど。
最初にわたしに声をかけてくれた主婦が月曜日に自宅を開放して
近所の老人が気楽に集えるような場所を提供してくれたのである。

このぐらいの規模が理想的だと思った。
会議も必要ではなく、ただ集まってくれるユーザーのことだけに集中できた。
手作りの昼食をみんなで囲み、老人のためさまざまな娯楽を企画し、
笑い声の絶えない素敵な集まりだった。

でもふたを開けてみると予想とは違うことも多々あった。
近所の老人を集めるつもりだったがユーザーのほとんどは遠くの地域。
近所の老人は又別の遠くの活動グループに参加している。

家の中の様々な内情が老人を介して筒抜けになるのを、
昔から顔見知りである近所の家人は気にするのである。
だから車での送迎が必要になった。
マイカーで送迎するのである。

事故を起こした時、責任を問わないという誓約書はもらったが、
それでもずっと気掛かりだった。
無事故で終了できたことを心底安堵している。

ユーザーとスタッフが家族的で理想的な関係を一度築いてしまうと、
小グループだけにメンバーの入れ替えはほとんどなかった。
立ち上げた時からユーザーもスタッフも10歳ずつ年を取ったということ。

ユーザのなかには亡くなった人もいるし、認知症の症状が現れた人もいた。
スタッフも今までのようにハツラツとは動けなくなった。
世代交代がうまく行かなかったのは残念だが、
こうして10年前の挨拶が嘘にならなくてよかったと思っている。



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sceneryの風景

わたしたちのボランティア活動は彦根市から補助金をもらっていた。
何十万円という金額だから、金銭的にはかなりの助けになった。
当然年度末にはきちんとした報告書の提出が必要になる。

収支決算書、運営事業報告書などなど
領収書を添えて書き上げるのが一仕事だった。
なんでもかんでも補助金の対象経費になるわけではない。

この区分けも頭が痛かった。
でも幸いなことに現役時代はエクセル、ワード、パワーポインター
などを職場で使うことが多かった。

だから、この知識が報告書を書き上げるのにかなり間に合った。
決算書にはかなりややこしいルールがあるのだが、
計算式を全部エクセルに埋め込んだ。
必要最小限の入力をすれば自動的に報告書が仕上がるように作ったのである。

会社で獲得した技術がこの点でも非常に役に立った。
毎年毎年定年退職を迎える多くの仲間が増えて行く。

ボランティア活動に積極的にかかわってゆくのは、
悪くない時間つぶしだと、そのような仲間にぜひ薦めたいと思っています。



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