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            日常の風景   NO.0361
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若者を睨む

電車に乗って自分の席が決まったとき、
わたしが真っ先にするのは持っているカバンを網棚の上に置くことである。
そうしてからおもむろに座席につく。

網棚と表現したのだが、最近は銀色の4本のステンレスのパイプ棚。
正確に言えば網棚ではないのだが
他に適当な言い方を知らないので以下も網棚で通す。

最近は電車の網棚にモノを置く人が極端に少なくなった。
みんなどうしているだろうと観察すると、
自分の前の床に直接カバンを置く人が多い。

わたしには土足で踏む床に直接モノを置くのは
かなりの抵抗があるのだが、若者にはそれがないらしい。
洋画でベッドにまで土足のままで上がり込んで来るシーンがたまにあるが、
現代の若者の感覚もこれに似てきたのかもしれない。

床に直接カバンを置くのはだれに迷惑をかけているわけでもないので
まあ、よしとしよう。
だが今日は座席の横に大きなリュックを置き、
スマホのゲームに夢中になっている若者がいた。

徐々に電車は混みはじめ、立っている人が多くなってきたのに、
席を譲る気は全くなさそうである。
70歳を優に超えている老夫婦が横に立っても無視。
幸い前の席がひとつ空いたので、老夫人だけは座ることができた。

しかし横に立っている老人も情けない。
なぜ「すみません、ちょっとカバンをどけていただけませんか」
の一言がいえないのだろう。

最近はわたしもトシを取ってきて、
激情とか怨念とか憤怒とかそういうわずらわしい感情からは
出来るだけ遠ざかって暮らしたいと思っている。

しかしこの状況はひどすぎる。
読んでいた本の内容もまったく頭に入らない。
仕方なくわたしは本を閉じて若者を睨む。
睨み返されても困るのだが強く睨み続ける。

眼光鋭いわたしの視線は、自分でいうのもなんなのだが、
見事な効果を発揮した。
視線の圧力に耐え切れなくなった若者は、
京都のひとつ手前の山科という駅でオドオド、ソサクサと降りて行った。

わたしのおかげで老人はやっと席に着けたのに、
黙礼もなかった。すぐにふたりで楽しそうに何かを喋っている。
まったくもう、最近は若者も年寄りもナットラ〜ン。
実に嘆かわしい。



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sceneryの風景

安保法案が可決された。
60日ルールが適用されるという日程になったとき、
結論も結果もお互いにわかっていたことである。

終盤は泥臭い田舎芝居を見せつけられているようで、
テレビのニュースもほとんど見なかった。
「あらゆる手段を行使して阻止する」といっていた野党。
あらゆる手段が結局日程を一日か二日遅らせただけのことである。

自民党も「内閣信任決議案」を先に提出して
野党のパーフォーマンスである見せ場を作らせないという意見まで
あったらしい。
結局野党にも花道を用意するというシナリオに落ち着いた。

選挙に負けたということは惨めですね。これが民主主義なのですね。
今回のことで一番よかったのは国民が真剣に
戦争や平和や安全ということに向き合い、
他人事ではないと若者もデモに真剣に参加したことでしょうか。

でもこれで終わりではありません。
法律は人が作るものですから、まずいと思えは作り直せばいいだけのことです。
次の選挙では
「現憲法の元では、集団的自衛権は行使しません」という
明確な法律をひとつだけ通しますということを争点に選挙を戦えばいいだけのことです。

国会で論争された問題のほとんどは
個別的自衛権で処理できるものばかりです。
アメリカは手放しで喜んだとは思いますが。



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