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            日常の風景   NO.0396
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バリ島の凧揚げ

ヴィラの庭の極めて濃い重層的な緑を眺めていると、
やはりここは熱帯地方なのだと思う。
低い場所にはバナナの木やゴムの木のような、
幅広い葉っぱの健康で鮮やかな緑が密集している。

ニワトリの鳴き声、犬の吠える声、牛の鳴き声などで目覚めたら
すぐにプールサイドに置いてある
折り畳み式のレジャーベッドに寝転がってこの緑を
ぼさっと見ている時間が好きだった。

高い場所には青空を切り裂くように数十本の
ココナッツリーの木がヴィラを見下ろしている。
10メートルは優にあるだろう。ココナッツがたわわに実っている。

ヤシの木とココナッツツリーの違いを日本人はあまり意識しないが、
実がならないのがヤシの木で実がなっているのがココナッツツリー。
両方とも日本人が見ればヤシの木なのである。

庭のココナッツツリーに糸の切れた空色の凧がひっかかっていて
いつも風に揺れていた。
紙と違ってビニール製だから、雨風にも強く、
シュールな現代芸術のように違和感を主張している。

バリ島の住人は大人も子供も凧揚げが大好きである。
青い空を見上げると大空にはいつも凧が数枚は上がっている。
競争があるのだろうとてつもない高い位置にまで凧を上げる。
上空には常にいい風が吹いているのである。

そして彼らは夜も凧揚げを楽しむのだ。
最初は夜空に輝く明るいものを金星か木星だろうと思って見ていた。
日本では見られない明るい星に見えた。
熱帯の星はこんなにも明るく見えるのだと感心もしていたのである。

その明かりが凧の明かりだと気づいたのは、
イルミネーション凧のおかげである。
LEDの電飾で飾り立てて光を変幻に操る凧。
初めてみればUFOだと誤解する人がいても不思議ではない。

そのイルミネーション凧が突然きりきりと急降下を始める。
あっ凧が墜落すると息を飲むと、
ぎりぎりのところで又さっと上昇に転じたりするのである。
凧揚げの技術をみんなに見せつけているのだ。

涼しい風が吹くバリ島の夜空はにぎやかで楽しい。



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sceneryの風景

バリ島ウブド郊外の整備された田んぼや
至る所に林立しているココナッツツリーが
立派な観光資源になるということを多分西洋人が気づいたのだろう。

わたし達のヴィラから百メートルも離れれば、
回りは一面の田んぼとココナッツツリーばかりである。
でも全くの田舎かというと田んぼが眺められるレストランがあり、
田んぼの真ん中にプール付きの立派なホテルがあったりする。

もちろんわたし達が借りたようなヴィラもいっぱいあるし、
昔からの村の小さな商店や数人しか座れないような食堂もかなりある。
だから暗い夜をみんなと散歩していても、
小道を走るバイクにさえ気をつけていれば危険な感じはまるでない。

ただ家に近づくとやたら番犬が吠え立てる。
日本とは違い犬としての本来の仕事をこなしている感じがする。

ヴィラの周りを夜散歩していて感激したのは、
田んぼの上を蛍が飛んでいるのである。
群生しているという風ではないが、
気をつけてみるとこちらに一匹、こちらに2匹と、
かなりの蛍が飛んでいる。

こんな風景はわたし達の子供の頃は当たり前の風景だった。
朝のにぎやかなニワトリの鳴き声といい、番犬のけたたましさや、
凧揚げや、蛍。
バリ島の田舎はわたしの原風景を刺激し続けた。



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