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            日常の風景   NO.0397
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バリ島での会話

プールサイドにあるお気に入りのレジャーベッドに寝そべりながら、
プールの水がどんどん溢れ出て前の小川に流れるのを眺めていた。
ヴィラのプールの水は毎日惜しげもなくすっかり入れ替わるのだ。

もちろん水道水ではない。
多分この地下には豊富な湧水があって、
それをポンプで汲み上げているのだと思う。

その時勢いよく繁茂している小川の雑草がガサガサとゆれて、
草の中に白いものがちらりと見えた。
清流が流れている幅1メートルほどしかない小川だが
両側の雑草が小川を半分ぐらい隠している。

レジャーべッドから降りて小川を見に行くと
一人の老人が小川を熱心に掃除していた。
鎌で両側の雑草も切り取っては小川に落としている。
小川の表面は雑草がじゅうたんのようになっていた。
もちろん適当な場所で雑草は陸に上げられるのだろう。

よく使いこまれたキャップをかぶり白い半袖のシャツを着て
顔は真っ黒に日焼けしている。
わたしは老人に大きな声で
「スラマッ パギー」(おはようございます)
と声を掛けた。
老人もすぐに「スラマッ パギー」と返事を返してくれた。

そして「ダリ マナ?」(どこから)とわたしに訊いてきたのである。
「ダリ ジュパン」(日本から)
ここまではわずか1ヶ月半勉強しただけの
わたしのインドネシア語は完璧。だがここまでが限界。

その後老人はいろいろいっぱい話してくれたが、
まったく理解できない。
わたしも聞きたいことは沢山あった。

この仕事はボランティアでしているのかとか、
それとも誰かに雇われているのかとか、
自治会の仕事なのかとかを?

でも老人の話の合間に
「サヤ ティダッ ムングルティ」(わたしはわかりません)とか
「サヤ ティダッ タウ」(私は知りません)
というだけが精いっぱい。

そして唐突に
「ナマ サヤ ヨシオ」(わたしの名前はヨシオです)
「ナマ アンダ?」(あなたの名前は?)
なんて訊いたりしていた。

まったく会話にはならなかったが、老人は終始笑顔だったし、
人と人とのコミュニケーションは取れていたと思う。
最後にわたしが
「トゥリ マカシー」(ありがとう)スラマッ ジャラン」(さようなら)」
と締めくくり、終わりも完璧だった。



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sceneryの風景

旅行用にその国の言葉を即席で覚えるのは割合得意である。
今までの経験から自分なりのコツがある程度は
分かっているつもりである。

誰かが外国語の会話は瞬発力だと言っていたが、
正にそのとおりで、
しばらく考えればわかるインドネシア語を50語知っているよりは、
すぐに口にできる言葉を10語知っている方が実戦的なのである。

旅行前からパソコンのディスクトップにアップしてある
ガジェットのメモ帳に覚えたいインドネシア語を書き出し、
呪文のように毎日繰り返していた。

日本に来ている外国人が、
「駅、どこ?」と言ったり「トイレ、ある?」
と問いかけてくれば意味はすぐに伝わる。

覚えるのは極端にシンプルにしたこのパターンの組み合わせである。
即席の会話なのだから文法はほとんど気にすることはない。

最初に覚えるのは「ありがとう」そして
「おはよう」「今日は」「今晩は」の挨拶。

インドネシア語で「ありがとう」は
トゥリ マカシー という。
わたしの場合、最初は呪文のようなこの言葉を漢字に置き換える工夫をする。
トゥリ マカシーは「通り魔菓子」とした。
漢字にすると覚えやすい上に、すぐに思い出せる。

まあ、これはわたしの個人的な工夫で
みんなに当てはまるかどうかはわからないが
覚えにくい英単語でもカタカナではなく漢字にすれば覚えやすい。



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