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            日常の風景   NO.0386
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宝くじに当たる

いつものように習慣的にパソコンのメールを開ける。
多くのジャンクメールのなかに、
「宝くじ当せんのお知らせ」という件名のメールがあった。

最初は詐欺まがいのメールだと思ったが、
発信者がジャパンネットバンクだったので、
急に心臓がどきどきとしてきた。

もちろん心当たりはある。
「数字選択式宝くじ」のロトを定期的にネット銀行から購入しているのだ。
ロトには3種類ある。

1から37の数字の中から異なる7個の数字を選んで購入する「ロト7」
1から43の数字の中から異なる6個の数字を選んで購入する「ロト6」
1から31の数字の中から異なる5個の数字を選ぶ「ミニロト」

賞金はロト7が4億円〜10億円。
ロト6が2億円〜6億円。
ミニロトが1000万円〜4000万円。
毎週それぞれ決められた曜日に抽選と当選発表がある。

一口200円だから毎週一口ずつ購入しても月に800円。
年間を通しても投資金額は9600円である。
夢という実体のない買い物だから多額の資金はむしろ不要。

わたしの選択は迷わずミニロト。1000万円。
わたしの年齢でこの金額なら
当せんすれば老後の生活をより豊かに充実したものにしてくれるに違いない。
億というような途方もない金額は人生を狂わせてしまうような気がする。

でも、1000万円がいいか2億円がいいかと問われれば、
逡巡せずに2億円の方を選ぶだろうから、
たとえ夢の話であっても人間の欲望には際限がないのがよくわかる。

パソコンですぐには当せんメールを読まなかった。
近くにあったタブレットを引き寄せて、指でページをめくり、
「当せん確認」というアイコンをまずクリックした。

今までに飽きるほど見慣れた、
第9××回「ハズレ」の表示が3回連続しているその上に、
第909回「アタリ」とクラウンのイラストが点滅している。
宝くじが当たったのはもう確実である。
購入を始めてから一年以上経過するのに当たったのは今回が初めて。

ミニロトの5個の数字は5人の家族の誕生日を入れておいた。
わたし、家内、子供二人、そして孫。
わたしと娘とは月は違うが誕生日は同じ日なのでこれでほぼ全員である。

さて、結果は。
驚いたことに5つの数字のうち4つまでは合っていた。
孫の誕生日「07」が「27」であれば
当せん賞金は1500万円であった。
だがひとつだけ外れたことになりその賞金は1万1千円也。
ああ、なんたる落差。

当たってラッキーな筈なのに、家内とひとしきりぼやき、
いつもの飲み屋でも又ぼやき、
メルマガででもまだこうしてぼやいている。

でもさすがに今はもう落ち着いた。
家族の誕生日が神様に祝福されたのだと思う。
今までに投資した以上の金額が回収できたのである。
それなりにラッキーなことだった。

このままの番号で続けようかなとも考えたが、
家内と相談の結果、わたしと家内の誕生日は残し、
わたしたちの結婚記念日とひとりだけ入れられなかった孫の誕生日を加えて、
次の祝福を気長に待つことにした。



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sceneryの風景

オンラインの銀行を通じて、ネットで宝くじを買う。
年間を通じて1000万円長者になれる機会があるのだから、
たとえ外れても9600円の投資額はその価値があると思う。

もし1000万円以上の賞金が当たれば、
前から一度やってみたい夢があった。
東京か大阪の一流ホテルで一ヶ月ほど住んでみたいのである。

朝食はホテルのティールームで香しいコーヒーとクロワッサンなどを食べ、
ロビーでゆっくりと新聞を読み、
やおら今日の予定を決める。

美術館に行くか、評判の映画を見るか、芝居にするか、
思い切ってテーマパークにまで足を延ばすか。なんてね。

でも実現すればすぐに退屈すると思う。
もっと小さなレベルでそのことは今までに何度も経験している。

日本の高度成長時代を生きてきた私たちの年代は、
もう宝くじには何度も当たったような気がする。

わたしたちの子供時代って、
洗濯は祖母がまだ小川で洗濯板を使って頑張っていたし、
ご飯を炊くのもかまどで火吹き竹をふーふーと使いながら、
炊いたことも小学生のわたしには経験がある。

お風呂もガチャコンポンプでバケツにくみ出し、
湯船に水を張るだけで大変な肉体労働だった。

わたしたちの世代はもちろん大変なこともいろいろとあったが、
トータルとしては宝くじに当たったと思う。
時代という大きな宝くじに。



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