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            日常の風景   NO.0392
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多景島に行く

「たまらんなぁ、この暑さ。今年の夏は異常やで」
という会話が毎年繰り返され、異常が異常でなくなってきている。
これが通常の夏だと考えざるを得ない。

かってはときおり吹いた琵琶湖からのそよ風を
「あー天国からの贈り物。クーラーをつけっぱなしにしてるやつには
分からんやろなこの自然のありがたさ」
何てことを豪語してほとんどクーラーをつけなかったわたしだが、
最近はもう完全にギブアップ。

日中から窓を閉め切り、日光を遮るために厚手のカーテンも引き、
電気を灯し、薄暗い居間でクーラーをつける。
そしてごろりごろりと無気力で怠惰な時間をだらだらと過ごす。

家内を見るとわたし以上に精気がなくぐったりとしている。
夏はまだ始まったばかりなのに
こんな日々が毎日繰り返されるのかと思うと暗澹たる気分になる。

「多景島にこれから行ってみよか?」
外は熱波で陽射しも強い。気分転換で逆療法だと、
冗談めかして、でも真顔で提案してみた。

家内は「うーん」と曖昧な生返事を返したが、
絶対に反対というのでもなさそうだったので、
追い立てるように着替えを急がせて車に乗った。

わたしの家からは速足でわずか5分も歩けば琵琶湖に出る。
琵琶湖に出れば正面に多景島が見える。
軍艦にそっくりな多景島。実は彦根市の八坂町なのである。

遠くの竹生島にはもう4回か5回は訪れているはずなのに
こんなに近くにある彦根市の島なのに
生まれてからまだ一度も多景島に行ったことがない。

ひとつの理由は無人島で何にもないちいさな島なのである。
でも生涯に一度ぐらいは訪ねてみようと何度か家内と話はしていた。
今日がその日になるとはわたし自身も気付かなかった。

びわ湖観光船の乗り場まで車で10分。
事前に船の時間は調べておいたので、ほとんど待つことなく、
多景島への定期観光船に乗ることが出来た。

お客は愛知県から来たという若いカップルと
わたし達夫婦のみ。

計4人の乗客を乗せて赤い船は多景島を目指して波を切る。
時間はわずかに20分。
船は多景島の周りをゆっくりと一周してから島に接岸。

上陸の時間は30分だったが、
とりたてて何にもない周囲600メートルの小さな島なので
地蔵さんとか日蓮上人の像とか岩に刻まれたお題目など
30分もあれば島の全部がゆっくりと見られる。
島全体が日蓮宗の寺領で聖地になっている。

多景島から彦根市を見ると、船でわずか20分だけ沖に出ただけなのに、
彦根城なんて、山の緑に溶け込んで意識して探さないとよくわからない。
大きな湖の背景を飾るような見事な入道雲がむくむくと湧いていて、
熱さで汗もびっしょりとかいたが気分もとてもよかった。

だらだらとした日常が何かのはずみで、
まるで異次元に滑り込んだかのような素敵な時間になった。



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sceneryの風景

わたしはNHKのプレゼンテーションという番組が大好きで
録画して取ためています。
でも他にも録画する番組が多すぎてすぐには見られないのです。

この間アメリカの元副大統領のゴアのプレゼンテーションを見ました。
半年ほどのタイムラグがあると思います。
彼は環境問題の取り組みでノーベル賞ももらいましたね。

そのゴアのプレゼンはさすがに迫力がありました。
暗い面だけではなく、明るい面、希望の持てる面も
強調していました。

その最たるものがパリ協定です。
人類が本気で環境問題に取り組めば、
人類の英知と善意で必ず克服できると
詳しいデータを具体的に示して力強く訴えていました。

わずか半年ほど前のプレゼンですが、
まるで遠い昔のプレゼンに感じられました。
世界が一致して危ういバランスの元やっと何とか前に進みかけていたのに、
トランプで全部ご破算です。

集中豪雨だけではなく、最近の暑さは異常です。
自然だけではなく世界の政治も経済も
何んだか大きなクラッシュが起こる
前兆のようなものをひしひしと感じます。



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