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            文章スケッチ   NO.0005
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黄昏の輝き

子供の頃「トワイライトゾーン」という
アメリカのテレビドラマが大好きだった。
たしかまだ白黒テレビで見ていたような気がする。

この世の物ともあの世の物ともつかない不思議な物語で、
大人になってからトワイライトというのは黄昏時のことだと知った。
昼とも夜とも決められない境界線。

トワイライト イヤー というのは今のわたしのこと。
日本語にすれば「人生の黄昏時」という訳になる。

今でも画家のターナーが描くような
ぼんやりとしたはっきりとしない風景や現象が大好きで、
これは子供の頃からの嗜好だったんだなと改めて思うが、
こと車の運転に関しては黄昏時は緊張する。見にくいのである。

黄昏時の混雑の巻き込まれ、お城の堀端を越えたところにある
交差点の信号でわたしの車は長い間待たされていた。
反対方向に進もうとしている車も同様に動きがない。
堀端の道路が上下線ともに完全に止まってしまっているのである。

そのとき、わたしの対向車線に止まっている車の
助手席に座っている若い男が
わたしをじっと異様な目で睨んでいるのに気が付いた。

青々とした剃り跡の髭がとても濃い外国人である。
彫りの深い典型的な中東のアラブ系の精悍な顔立ちをしている。

この混雑を引き起こしているのはわたしのせいではない。
それなのに何故こんなにもじっと睨まれなくてはならないのか
わたしには訳がわからなかった。

でも多分次の信号が変わるまでの我慢である。
わたしはその緊張にじっと耐えていたが、
やがて信号が青になっても車はまだ動かない。

とうとう緊張に耐えかねて、わたしは自分でも予想外の行動に出た。
思い切ってにこっと笑って手を振ったのである。
彼はわたしのアクションに気が付いてすぐに反応した。

テロリストのような顔が一変して無邪気な若者の笑顔になった。
彼が人差し指をさして、あちらを見てみろと言う風に指を動かした。

わたしが真後ろを振り返ると
たった今ライトアップされたばかりの彦根城が、
黄昏の薄闇のなかで見事に青白く輝いていた。



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sceneryのひとこと

今回わたしが感じたような誤解。
政治の世界でも同じことなのだと思う。
互いに相手を信頼せず、ずっと睨み合っていると
間違いなく緊張が高まるばかりである。

アメリカのトランプと北朝鮮の金正恩。
互いにある切っ掛けを好機として、
手を振り合おうとしているのは確かなように見える。

自分の選挙民のことしか考えないトランプは
確かに世界のリスクである。
でもトランプも金正恩も既成の政治家とは全く違う。

従来の外交的なプロトコルを飛び越えて、
このふたりが実際に会って、冗談でもいい合えば、
思いがけずに事態が良い方に急変する可能性も無きにしもあらずである。

常識では計りきれない
人間トランプ、人間金正恩。
ふたりの変人の奇跡の話し合いと奇跡の結果に期待しましょう。


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