*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            文章スケッチ   NO.0024
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

生まれ変わったら

喫煙席と禁煙席に分かれたふたつのテーブルのまわりに
20人程度の老人が座っている。6人の女性の姿もその中にある。
テーブルに置かれた4つの鍋からは湯気が吹き出ていた。

鍋の中身はおでんだった。
大根、コンニャク、小芋、ちくわなど定番の食材。
このうち大根と小芋は用事で今日の同窓会に来られなかった
メンバーのひとりがわざわざ畑のものを届けてくれたらしい。

偶数月の第一日曜日、時間も、場所も、会費もいつも同じ。
メンバーもほぼ同じという中学の同窓会を、
年金生活者の暇に任せて5年間も続けてきた。

座る席もほぼ同じなので、同じような相手と
毎回同じような話をすることになる。
同じような話をしているのに、不思議なことに飽きない。

これが多感な中学時代を共に過ごしてきた財産なのだろう。
想い出を語りながら、ときおり半世紀以上もの遠い昔から
青春の甘い香りを含んだ風がさっと吹くことがある。

この風が年寄りの、どびんとした日常に活力と刺激を与えてくれる。
まだもう少しぐらいは元気で生きられるのではないかという
希望にもなる。

ビールに代えてそれぞれの好みで「日本酒、冷で」とか
「芋焼酎、お湯割りで」とかを注文し出す宴もたけなわの頃、
「もし生まれ変われるとして、もう一度今の伴侶を選ぶ?」
と誰かが興味深い話題を投げかけてきた。

わたしはかなり昔に同じようなアンケートを雑誌で
読んだことがあるので、その話をしようとしたら、
まわりの女性軍から
「絶対に嫌」「考えられへん」
と逡巡なく明快な答えが返ってきた。

「一回みんなにその答えを聞いてくるわ」
と、メモ用紙を片手にすぐに立ち上がったのが、
この間わたしたちの中学校の時計台を
「ナニコレ珍百景」に投稿した同窓生である。

彼は考えたことをすぐに具体的な行動に移せるという
得難いパーソナリティを持っている。
とても尊敬できるが正直わたしにその真似はできない。

彼が持ち帰ってきた結果は衝撃的だった。
生まれ変わっても今の伴侶と一緒になりたいという人が、
男性は6人もいたのに、女性はゼロだった。

実は昔雑誌で読んだアンケートも、
よく似た結果で、男性はいまの伴侶を選ぶという人がかなりいたのに
女性は圧倒的に選ばないという人が多かった。

毎回この同窓会に出てこられるというメンバーは、
そこそこ自分の人生に折り合いがついて
まあまあ恵まれた環境にいる人達が集まっているはずである。
それにも関わらずこの結果である。

男社会をラッキーだと謳歌していた時代は完全に過ぎ去りました。
この年で熟年離婚だと騒がれないように、
男性軍は反省して、今からでも心を入れ替える必要がありそうです。



----------------------------------------------------------------------
sceneryのひとこと

同窓会のあくる日に偶然NHKの「あさイチ」という番組で
卒婚をテーマにいろいろと話し合われていました。

卒婚というのは最近よく耳にする言葉です。
別居するケースや同居のケースもあるようですが、格好よく定義すれば、
婚姻関係を続けながら互いに干渉せずに自由に生きる夫婦の形らしいです。
まあ、いろんな形があって人それぞれと多様性を認めるのはいいと思います。

わたしたちが生きてきた時代は、
「男子厨房に入るべからず」という時代で、
親からもそのような教育を受けてきました。

まじめに働いて給料もほぼ全額渡しているのだから、
それでいいだろうと、家事も育児もすべてを家内に任せ切りでした。
今から考えると過酷な負担をかけていたと反省しています。

定年後少しはそのことに気がついて家事も手伝うようようにはなりました。
この年で卒婚などと宣言されたりすれば頭を抱えることになります。
ちなみに上記のアンケートへのわたしの答えは
ヒフティヒフティという中途半端なものでした。



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@zd.ztv.ne.jp
HP 日常の風景
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/

----------------------------------------------------------------------
日常の風景が本になりました。ご覧ください。
http://www.geocities.jp/scenery_jp2/book/book.html

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、

『メルマ』  (マガジンID: 50779) http://www.melma.com/
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)   http://www.mag2.com/

を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/ からお願いします
----------------------------------------------------------------------