*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*
            文章スケッチ   NO.0049
*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*

老いと読書と携帯と

長い間、小説は紙でつくられた本で読むものだった。
それ以外の選択肢はなかったし自明の常識であった。
ただし本を読むスタイルは人によって様々だろうと思う。

私は立派な机が部屋にあったのに、その机の上で読んだことはほとんどない。
両手で本を持ち、ベッドに仰向けに寝転んで読むのが常だった。
だが加齢とともに目が悪くなり、筋力が衰え、
長時間単行本を支えているのがつらくなった。
軽い文庫本では活字が小さすぎて読めない。

去年、ベッドに備え付けられるブックスタンドをネットで見つけた。
多少高価だったが、フリーハンドで本が読める。
これは画期的な器具だと嬉しくてみんなにも勧めていた。

ブックスタンドに立てる適当な次の本が見つからなかったとき、
わたしの携帯の中には「青空文庫」や「Kindle」が入っているのをふと思い出した。
無料で日本の巨匠の名作が読めるというので、
一時期試してみたことはあったのである。

でもその時は、なんの魅力も感じなかった。
名作の最初だけをあれこれと読み飛ばしただけで、
やっぱり紙の本にはとても太刀打ちできる代物ではないと、
早々に結論づけてそのままうっちゃっておいた。

人間て面白いですね。自分でも理由がわからないのに、
ふと気が変わることがあるのです。
あの時に試した「青空文庫」や「Kindle」は今どうなっているのだろうと。

一度は携帯で何かの長編を一冊丸ごと最後まで読み通してみるのも、
貴重な経験にはなるだろうし、今トライしないともう一生できないという
あせりのような気分も多少あった。

そして「Kindle」のライブラリーのなかにあった夏目漱石の「こころ」を
読み始めることに決めた。
「こころ」は若い時に読んだ記憶はあるが、内容はまったく覚えていなくて、
ただただ、しんきくさい小説だったという印象だけが残っている。

久しぶりに「Kindle」を開けるので、最初は戸惑ったが、
すぐに慣れてきた。まず読みやすいフォントをいろいろ試し、
活字の大きさや文字間隔を納得ができるまで調整した。

作業を続けているうちにこんなことができるのは、デジタルブックだけだということに
気が付いた。携帯で本を読む利点も素直に認めようとこころも入れ替えて「こころ」を
読み始めると、夏目漱石が伝えたかっただろう人のこころの機微、切なさ、愛らしさ、
虚栄、誇り、わかっていながらどうにもならないやっかいさ、などがするすると私の中に積もってゆく。

三日間ぐらいで全部読み切ってしまった。
退屈などは一度も感じなかったし、なるほどこれは名作だと納得されられた。
調子に乗って次は太宰治の「人間失格」に挑戦。
これもするすると二日で読んだ。太宰治は可哀想で孤独な天才。

年をとっても挑戦はしてみるものですね。
新しい楽しみの選択肢がひとつ増えました。



----------------------------------------------------------------------
sceneryのひとこと

みなさん、お元気ですか?
毎日続くこの酷暑。年寄りには堪えます。
この間、インドネシアのバリ島から帰ってきた友人が言ってしました。
日本は熱帯のインドネシアよりも熱いと。
日本もすっかり亜熱帯地方になりましたね。
もう元に戻ることはないでしょうね。
日常の風景も久しぶりに書きました。
元々書くことは好きですから、書く材料に困ることはないのですが、
なかなかそれを形にするのがおっくうで困ります。



----------------------------------------------------------------------
発行者 scenery
north@zd.ztv.ne.jp
HP 日常の風景
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/

----------------------------------------------------------------------
ユーチューブで「おっさん英語」始めました。
https://www.youtube.com/user/scenery1003

----------------------------------------------------------------------
日常の風景が本になりました。ご覧ください。
https://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/ZTV-PHOTO/book/book.html

----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、
『まぐまぐ』 (マガジンID: 79888)   http://www.mag2.com/
を利用して発行しています。

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンの退会・解除は
http://www.zd.ztv.ne.jp/scenery/ からお願いします。

----------------------------------------------------------------------