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日常の風景 NO.0154
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砂漠と星空
エジプトのカイロまでのエアーチケットがいちばん安かったのが、
UAEと呼ばれるアラブ首長国連邦のエミレーツ航空だった。
エミレーツ航空は、一度ドバイを経由してから、カイロに向かう。
だから、ドバイへの観光は、ついでの旅だった。
ドバイはオイルマネーに物を言わせて、
世界中の金持ちを集めるという戦略のもとにつくられつつある、
実験的で、人工的な都市である。
本意ではもちろんなかったが、ドバイを楽しむには、金持ちの素振りをしなくては、
あまり、行くところがない。
仕方なく、一泊だけは、超豪華なホテルを予約した。
ふたりで一泊する価格が朝食つきで約6万円だった。
広大な敷地のホテルには運河が掘られており、
30以上はあるホテル内のレストラン、市場、プール、真っ白な砂浜のプライベートビーチなどへは、
5~6人乗りの小船で移動する。
わたしと妻は、とにかく、24時間、生まれてはじめての贅沢なホテルライフを楽しんだ。
日本に帰る最終日は、フライトが夜中の2時45分。
昼過ぎにホテルをチェックアウトすると、あまりにも、時間が余りすぎるので、
デザート・ワンダーと呼ばれるツアーに参加することにした。
砂漠を見学にゆくツアーである。
サファリー用の4WDにツアー客が6人乗り、ドバイからくるまを走らせること30.分。
広大で赤茶けた不毛の土地を走り続けると、
360度砂ばかりのフルデザートの世界にたどり着いた。
砂紋がどこまでも続く、起伏の激しいこの砂漠を、
観光用の4WDは、ジェットコースタさながらに駆け回るのである。
くるまごと横転してしまうのではないかという恐怖に何度も襲われた。
激しいドライブに疲れた頃、砂漠の真ん中で、4WDはやっと止まってくれた。
わたし達のくるま以外にも、7、8台のくるまが後を続いていた。
砂漠の真っ只中の小高い砂山の上に立つと、
まわりは、荒涼とした清廉さに満ちていた。
日没が近いのだが、陽射しはまだまだ強烈である。
そこにタイミングよく、背中に荷物を積んだらくだが二頭ゆっくりと砂漠を歩いてゆく。
らくだの後姿を眼で追いながら、
ふと唐突に、ここにひとりぽっちで取り残されるようなことがあったら、
間違いなく死ぬなと思った。
焼け付くような太陽。カラカラに乾く喉。干からびて砂の中に埋まるようにして向かえる死。
そんなふうして死ぬのは嫌だなと、強烈な死の恐怖のイメージが湧き起ってきた。
砂漠の真ん中にあるらくだファームで、多くのらくだと真っ赤に沈む夕陽を見届けた後、
わたし達の4WDは、最終目的地である、ベースキャンプにたどりついた。
そこはオアシスというよりは、享楽的な繁華街のような雰囲気のキャンプであった。
煌々と灯されている電灯。
よく冷えたあらゆる種類の、ビール、ワイン、ブランデー、ウィスキー。
たまたま、ラマダンの期間でベリーダンスは中止されたが、
中央にセッティングされている、生々しく扇情的なベリーダンスの舞台。
目の前で焼き上げ、分配してくれる、香ばしく焼きあがったバーベキュー。
ここが砂漠のど真ん中であることをいつしか忘れてしまう。
でも、最後の10分間、自家発電が止められ、
まわりから人工的な光が完全に遮断されるという演出があった。
誰からともなく、歓声と、驚愕に近いためいきが満ちた。
透明度の高い、砂漠の夜空に、満天の星がひしめくように輝いているのである。
夜空には、こんなにもたくさんの星が毎夜ひかり輝いていたのだ。
天の川の星は、数があまりにも多すぎて、
うす雲のなかで蛍が無数にたわむれているようにも見える。
これと同じ星空を、子供の頃わたしは彦根でも見たことがある。
まだ、舗装もされていないでこぼこ道の道路を、母親に手を引かれ、
上を見上げながら安心して歩いていた、あのときの星空と一緒だった。
適度な酔いも手伝ってか、星空に吸い込まれるようにして、このまま死んでしまうのも、
それほど悪いことではないなと、さっきとはまったく逆の感情が芽生えていた。
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sceneryの風景
エジプトのカイロにゆくのに、エミレーツ航空を選んだのは、
まったくの偶然である。
価格が一番安かったからである。
カイロまでの直行便はエジプト航空があるのだが、
ほとんどの場合直行便は料金が高い。
エミレーツ航空の本拠地は、UAEと呼ばれるアラブ首長国連邦である。
だから、飛行機はドバイに一度立ち寄ってからカイロに向かう。
今回の旅を計画するまでは、アラブ首長国連邦がどこにあるのか、
ドバイがどのような都市なのかまったく知らなかった。
だが、折角ドバイに立ち寄るのだからと、ついでの旅として、
ドバイにも2泊するスケジュールを組んだ。
ドバイは洗練された国際高級リゾート都市をめざしている。
潤沢なオイルマネーを惜しげもなく遣い、実験的でユニークな形の高層ビルが林立している。
大規模なショッピングセンターも10箇所以上はある。
現地の新聞を読むと、今後5年間で、さらに55000室以上の、
贅沢なホテルを次々と建設する予定と書いてあった。
日中外を歩けば、35℃はあるほどの気温なのだが、
驚くことなかれ、いつでも本格的なスキーができる施設まで、街中にある。
しかも、雪が自然に空から舞い落ちてくる演出まで兼ね備えていると聞いた。
今回の旅行は、カイロ、ルクソール、アスワンと回りました。
写真も1000枚以上撮りましたので、整理が大変ですが、
次号で紹介できると思います。
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