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            文章スケッチ   NO.0050
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悲劇と喜劇の間で

「この世界は、感じる人には悲劇だが、考える人には喜劇である。」

英国の古い昔の作家が残したこの言葉を、
私は最近になってようやく自分の人生に重ねて理解できるようになった。
最初は意味が掴めなかった。

だが、たまに思い出してゆっくり噛みしめるうちに、
この言葉はよくわからないまま私の胸の奥に沈んでいった。

世の中には、すぐに理解できることと、すぐには理解できないことがある。
そして歳を重ねるほど、後者のほうが人生にとって大切なのだと気づく。
世界は白か黒かで割り切れるほど単純ではない。
むしろ「すぐに納得できる言葉」ほど、どこか嘘の匂いがする。

モーゼの十戒のように、
「殺すな」「盗むな」「姦淫するな」
といった絶対的な倫理は、誰にでもわかる。
だが反面、絶対という言葉ほど疑わしいものはない。
この世界に絶対など存在しない。
人間世界はもっと複雑で、もっと矛盾していて、もっと面倒くさい。

だからこそ、本を読んだこともない古い作家の名言が私の心に刺さったのだと思う。
「感情で受け取れば悲劇、思考で受け取れば喜劇」
この言葉は、私自身の人生だけでなく、
長年、共に歩んできた文学仲間の人生にも重なった。

私は文学が好きで読むだけではなく、エッセイやたまに短い小説などを書き続けてきた。
仲間たちも同じだ。詩、短歌、俳句、川柳。
ほとんど仲間内だけで読まれる小さな雑誌を、気づけば五十年以上も発行してきた。

本物の文学者から見れば、私たちの世界は甘い自己満足にすぎないのかもしれない。
だが、私はその「甘さ」を誇りたいと思う。
なぜなら、文学とは「感じる」だけでは終わらない営みだからだ。
人は誰でも何かを感じる。怒り、悲しみ、喜び、孤独。
感じるだけなら、それはしばしば悲劇になる。

しかしアマチュアであっても文学者は、感じたままでは終わらない。
その感情を言葉にしようとする。
日常のざらつきや、心の奥の暗がりを、どうにか言葉に変換しようとする。
それは癖のようなものだ。
意識していなくても、心のどこかで常に「考えて」いる。
この「考える」という習慣こそが、
悲劇を喜劇へと変える力なのだと、私は最近ようやく理解した。

五十年。
仲間とともに紡いできた小さな文学誌。
誰に褒められるわけでもない。
賞を取るわけでもない。
ただ、感じたことを考え、考えたことを言葉にし続けてきた。

その営みがあったからこそ、私たちは人生を悲劇のまま終わらせずに済んだのだと思う。
考えることで、世界は少しだけ軽くなる。
少しだけ明るくなる。少しだけ希望が見える。

名前も知らなかった英国の作家の名言を思い返して
私は仲間ひとり一人を思い浮かべた。
そして心から拍手を送りたいと思った。
悲劇を喜劇に変えながら生きてきた、あの長い歳月に。
そして、今もなお言葉を紡ぎ続ける自分自身にも。



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sceneryのひとこと

この二週間、日本列島のどこかで洪水が起きている。
トップニュースはすべて天気に関するニュース。
線状降水帯というあたらしい言葉もすっかり耳になじんだ。

しかし、どうなってしまったのだ。この地球は。
日本だけではなくネパールでは氷河が溶けて割れての大災害。
原因は地球の温暖化だとみんなが知っている。
でも何もできない。

世界のトップリーダーが真剣に考えているのは、
戦争のことばかり。
たとえ平和な世界であっても、
温暖化を止めるのは利害が対立することばかりで
まとまらないのに・・・
私は毎日ぼやくばかりで、もうこのことについては何も考えられない。



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発行者 scenery
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