かもしか考
私はときどき山中で「かもしか」に出っくわします。登山道上に彼がいなければ問題はないわけですが、どういうわけか私の場合は私の進む方向に彼が居座って、”にらめっこ”状態に入ってしまいます。時には2〜3mの距離まで近づかれたこともあります。そんな時どう対応すべきかよくわかりません(現在でもわかっていません)。「森の哲学者」と云われる彼らは一体何を考えているのでしょうか。
そこで「かもしか」についての本をすこし読んでみましたので、簡単にまとめてみました。
分類
- ニホシカモシカは、ウシ科に属している。ウシ科にはウシ類とヤギ、ヒツジ類の二つの大きなグループがある。この中でニホンカモシカはヤギ、ヒツジ類に近い動物で、ウシ科、ヤギ亜科、シャモア族、カモシカ亜属に分類されている。
このカモシカ亜属の中には、台湾にすむタイワンカモシカが含まれている。二ホンカモシカ(以後本文ではカモシカとよぷ)は、本州、四国、九州のみにすんでいる日本の特産種で、その生息地も山岳地帯等に限られている。こうした飛石的分布は、カモシカ類がきわめて古い型の動物で、新しい型のウシ科動物によって滅ぼされ、各地にほそぼそと生き残ったものであることを患わせる。こういう動物達を遺残(いざん)動物(レリック)といっている。
日本のカモシカもその一員で、カモシカグループと呼ばれているシーロー、シャモア、シロイワヤギ、ジャコウウシなとは、北半球における遺残動物であり、わずかにユーラシア南部に夕一キン、ゴーラルが分布しているがいずれも山岳地帯にすんでいる。生物地理からみた日本の動物相は、大陸と深いつながりがある。ただその関係も、北海道と本州以南ではかなりの違いがあり、本州以南では東南アジア的要素が多く入りこんでいて、カモシカもその1例といえる。
遇蹄目 | --- | ウシ科 | --- | ヤギ亜科 | --- | サイガ族(2属2種) | | ゴーラル属 |
| | シカ科 | | ほか5亜科 | | シャモア族(4属5種) | --- | カモシカ属(シーロー) |
| | ほか7科 | | | | ジャコウウシ族(2属2種) | | マウンテンゴート属 |
| | | | | | ヤギ族(5属17種) | | シャモア属 |
哺乳類遇蹄目ウシ科ヤギ亜科シャモア族カモシカ属のニホンカモシカ
学名 Capricornis crispus
身体的特徴
- 同じ仲間のタイワンカモシカに比べて、日本のカモシカの方が身体が大きい。一般的には、進化の歴史の中で新しく出現したものほど大型であるといわれているが、この場合、同一種あるいは同一系統のものは、北の寒い地方ほと・大きくなるというベルグマンの法則が適合しているものと思われる。日本のカモシカは、身体も小型から中型で四肢が短く、シャモア族の中でも原始的な種と思われ『生きた化石』とも呼ぱれている。
- 雌雄両方に角があり、この角はシカのように枝分れや、角が落ちることがなく年々成長する。また、一定の行動圏をもちその中で単独、あるいは家族群で生活をしているものも多いが、時には行動圏を持たずに暮らすものもいる。
平均寿命 | オス6.2歳 メス6.5歳 (最高齢 22〜24歳) |
性成熟年齢 | 2.5〜3歳 |
重さ | 30〜40Kg |
体高(肩までの高さ) | 70〜80cm |
角の長さ | 12〜15cm |
生活
- 単独生活を送り、狭い範囲(1平方キロ以内)をなわばりとしてその中で通年生活する。
生活は「食べて休んで、また食べて」で夜間も続く。
食べ物 木本類(5〜10月は葉 冬は枝先と冬芽)
- 春 出産、毛がわり
秋 交尾
性行動 オスがメスに対し"においかぎ" "フレーメン" "角押し" "前足けり" "マウント"
妊娠期問は約7カ月で、秋の終わりから冬にかけて交尾をし翌年の春に出産する。普通1頭を出産するが、まれに双子を生んだ例も報告されている。
- 子は最初は母乳に頼る生活だが、次第に柔らかな植物の芽や葉を食べるようになり、秋口には親と同じエサを食べるようになる。生まれた子は約1年親と過ごし、その後は行動圏を出て別行動をとるようになるが、それまでに約3分の1が死亡してしまうといわれている。
- なわばり 定住性は強い。同性同士がなわばりに入ってくると激しい追っかけがあることがある。異性では見られない。
飼育
- カモシカが本格的に動物園などの施設で飼育されはじめたのは、戦後のことである。昭和20年代は失敗の連続だったが、その後研究が進み昭和30年代には飼育が可能になり、昭和40年代には繁殖に成功している。
その後は各地で飼育・繁殖に成功すると共に、飼育施設が増え飼育数も100頭以上になった。外国へは昭和48年に中国に渡ったのを皮切りに、アメリカ、ヨーロッパにも送られている。
分布
- カモシカは北海道を除く本州、四国、九州に分布しており、カモシカの全国的な分布調査は環境庁、哺乳類分布調査科研グループが行っている。科研グループによるとカモシカは、東北地方では、全域の山岳地帯にまばらに分布しているか、阿武隈山地のものは絶滅してしまっていて、現在は生息が確認できないという。また中部地方では、岐阜県や富山県から西には連続した分布域がなくなり、狭い小範囲に分布しているのみである。近畿地方では、紀伊半島の中央部分の分布のほかは、琵琶湖周辺の山岳地帯に小さな分布が認められるだけで、それから西にはカモシカはまったく生息していない。四国地方の分布域は、剣山系を中心にした分布域が残るのみで、石鎚山脈の小さな分布域はその周辺を広大な絶滅域にとり囲まれていて、その中で細々と生き続けるカモシカは危機にあるといわれる。九州地方では、大分、熊本、宮崎の3県にまたがる山岳域と、その周辺に生息するのみである。
関連情報
ホームページにもどる
_